中東かわら版

№112 イエメン:統一政府樹立を目指す「リヤド合意」の進捗

 2020年12月10日、イエメン戦争に介入を続けるサウジ主導有志連合、及び同連合が支援するハーディー大統領(イエメン暫定政権)は、暫定政権と南部移行評議会(STC)との間で、2019年11月に結ばれた「リヤド合意」実現のための具体的な準備が整ったと発表した。リヤド合意は暫定政権とSTCが統一政府の樹立を目指して停戦することを取り決めたもので、これまでは権力分有をめぐって具体的な進捗が見られなった。しかし今般、閣僚24ポストをSTCをはじめとする暫定政権以外から登用することで両勢力間で合意がなされ、各県知事の任命についても配分が図られたとのことである。以上の意義として、リヤド合意の仲介役であるサウジはイエメン戦争が終結に向かっていること、イエメン暫定政権側は武装勢力アンサールッラー(通称フーシー派)の掃討が進むであろうことをそれぞれ強調している。

 

評価

 2019年8月から暫定政権・STC・アンサールッラーの三つ巴が続いていたイエメン戦争では、STCが暫定政権との停戦に応じることで、リヤド合意後の権力分有の主導権を握ってきた。これを踏まえ、今次決定でSTCは暫定政権から大きな譲歩を勝ち取ったと言えよう。ただしアンサールッラーやアラビア半島のアル=カーイダ(AQAP)といった対立勢力はまだ存在するため、統一政府の樹立が国内の安定を生み出す保証はどこにもない。なおアンサールッラーはリヤド合意に無関係であり、当然この正当性を認めていない。

 一方、リヤド合意の仲介を自国の成果とアピールするサウジ側には、統一政府の樹立をイエメン戦争の一つの区切りとしたいとの思惑が看取できる。2015年以来イエメンへの軍事介入を続けるサウジは、イエメン戦争を「失敗」には見えない形でまとめる必要があり、統一政府の樹立をこのための象徴的な出来事と位置づけている。ただし、そもそもSTCはイエメン戦争のさ中、2017年5月に離脱・発足した勢力であり、リヤド合意は時計の針を2017年5月以前に巻き戻したに過ぎない。この点、リヤド合意を2015年以来のイエメン戦争の終結と位置づけることには無理がある。

 

関連情報として、下記レポートもご参照ください。

 <中東かわら版>

「イエメン:UAE・イスラエルの国交正常化合意の余波」2020年度No.72(9月4日)

「サウジアラビア・UAE:イエメン紛争の仲介と停戦協定「リヤド合意」」2019年度No.129(11月6日)

 

(研究員 高尾 賢一郎)

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