中東かわら版

№83 クウェイト:サバーフ首長の崩御

 2020年9月29日、首長府は米国で療養中のサバーフ首長(1929年生、2006年即位、享年91歳)が崩御したと発表した。同首長は7月19日に入院について報じられたが、外科手術を受けたこと以外の詳細を報告されず、その後米国で検査入院を続けていた。また当初の手術報告以来、サバーフ首長の容態は安定していると首長府から伝えられており、直近では9月14日に、公式報道のみを参考にするよう首長府から国民に対して呼びかけられていた。なお政府は同首長の崩御に伴い、ナウワーフ皇太子(1937年生、83歳)が首長に指名されたこと、今後40日間を服喪期間をすることを発表した。

 

評価

 サバーフ首長は外相を合計約40年間務め、湾岸戦争後の主要諸国との折衝も担うなど、国際社会との交流が豊富な人物として知られていた。このキャリアを生かす形で、クウェイトは域内の仲介役として、近年ではイラク・イラン・サウジ間の緊張緩和に向けてGCC側の窓口役を担ってきた他、サウジ・UAE・バハレーンによるカタル封鎖といったGCC内の軋轢をめぐっても仲介的な立場を演じてきた。こうした背景から、サバーフ首長崩御の影響としては、王位継承問題をはじめとする内政よりも、域内諸国との関係を中心とした外政に注目が集まるだろう。もっとも、新体制になって外交政策が大きく転換するとは考えられず、たとえばこれまで否定してきたイスラエルとの国交正常化を突如進めるなどの動きは想像しづらい。むしろCOVID-19感染拡大に伴う外国人労働者の給与未払い問題など、現在報じられている幾つかの内政課題に対し、服喪期間後にどう取り組むかが注目される。

(研究員 高尾 賢一郎)

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