中東かわら版

№71 サウジアラビア:イスラエルとの国交正常化を改めて否定

 2020年9月2日、ファイサル・ビン・ファルハーン外相は、「パレスチナ問題とパレスチナ人に対するサウジの姿勢は不変」であるとして、サウジがUAEに追随してイスラエルとの国交正常化を進める可能性を改めて否定した。

 この背景として、まず8月31日、イスラエルからアブダビへの初となる商用便がサウジ北部の領空を通過した。そして翌日、サウジ民間航空局がUAEの要求に応える形で、UAE発着の航空便が領空を通過することを許可する旨を発表した。さらに9月1日には、ムハンマド皇太子が、米国のクシュナー大統領上級顧問とリヤドで会談し、中東和平について協議した。これらに注目が集まる状況下、ファルハーン外相の発言は、サウジ・イスラエル関係がUAEと米国の後押しも手伝って公式に進展するとの見方が国内外で形成される事態を防ぐ意味を持った。

 

評価

 1日のムハンマド皇太子とクシュナー大統領上級顧問の会談では、「公正で恒久的な和平の実現」を目指したパレスチナ・イスラエル間の交渉をサウジが支援することが確認された。2日のファルハーン外相の発言にも見られるように、サウジ側はUAE・イスラエルの国交正常化に関する話題で概ね「パレスチナ」という単語に言及し、自国主導で提案された、パレスチナ国家の独立を軸とする2002年のアラブ和平イニシアチブにこだわる姿勢を崩さない。サウジ側としては、「アラブの大義」のけん引役としての矜持に加え、中東和平がUAEと米国の主導で進展することを是としないという思惑もあるだろう。

(研究員 高尾 賢一郎)

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