中東かわら版

№54 チュニジア:ガンヌーシー国会議長への不信任案が否決

 2020年7月30日、ガンヌーシー国会議長に対する不信任案の採決が実施され、賛成票(97)が過半数(109)に届かず、同案は否決された。その結果、ガンヌーシーは最大2024年まで任期を継続できる。なお、彼が党首を務めるナフダ党(議会第1党)は尊厳連合とともに本投票を棄権した。投票結果は以下の通りである。 

 

表1 ガンヌーシーへの不信任案の投票結果

投票数

133(全217議員)

賛成票

97

反対票

16

無効票

18

白票

2

(出所)国営通信「TAP」7月30日 

 

 今回の不信任案は、4つの議会会派(民主連合や改革連合、国民連合、タヒヤ・トゥーニス党)から提出されたものである。彼らはガンヌーシーが議長として議会運営を管理できていないと批判し、また対トルコ関係やリビア内戦をめぐる彼の言動を問題視してきた。

 ガンヌーシーは、不信任案の投票が本会議で実施されたことはチュニジアの民主主義の新たな一歩であると評価し、今後サイード大統領が任命したマシーシー首相を全面的に支援する意向を示した。

 

評価

 今般、ガンヌーシーへの不信任案は否決されたものの、彼の議長解任に同意する議員が、過半数に残り12人まで迫ったことは注目に値する。今回の投票により、議会でナフダ党と協力する会派と、対立する会派間の分裂がより鮮明となった。

 ナフダ党と対立する会派には、①同党と以前は協力関係にあった会派、②従来よりナフダ党を敵視する会派、の2グループに分かれる。①は、前内閣でナフダ党と連立政権を組んだ民主連合(民主潮流党及び人民運動)やタヒヤ・トゥーニス党などである。同グループはこの数カ月、ガンヌーシー及びナフダ党によるトルコ・カタル・リビアの国民合意政府(GNA)寄りの政策を度々批判するなど、同党との関係が悪化していた。②は自由憲法党を指し、同党はベン・アリー政権期の与党・立憲民主連合(RCD)出身者によって創設され、かねてよりナフダ党を政敵として見ている。

 党派間の対立が激化する最中、マシーシー首相は8月25日までに組閣を行い、新内閣は議会承認を得る必要がある。無会派議員(7月28日発表時で17人)の動向次第では、ナフダ党陣営が過半数を下回り、ナフダ党抜きの新内閣の樹立もあるだろう。一方、新内閣が過半数をわずかに上回る承認票で成立した場合では、政権運営が不安定となり、現在の混乱が収束しない可能性も考えられる。

 

【参考情報】 

*関連情報として、下記レポートもご参照ください。 

<中東トピックス>【会員限定】

・「チュニジア:リビア内戦に関する発言でガンヌーシーへの批判」T20-02(2020年5月号) 

<中東かわら版>

・「チュニジア:ファフファーフ首相が辞任」No.45(2020年7月17日)

・「チュニジア:マシーシー内相が新首相に」No.51(2020年7月28日)

 

 

(研究員 高橋 雅英)

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