中東かわら版

№45 チュニジア:ファフファーフ首相が辞任

 サイード大統領は2020年7月15日、ファフファーフ首相の辞任を発表した。辞任の背景には、同首相と与党・ナフダ党との対立があった。対立の原因は、ファフファーフ首相が国の業務を請け負う企業の株式を保有したことで、同首相に利益相反の疑いが生じたことである。これを受け、ナフダ党は同首相の汚職疑惑を追及するとともに、不信任決議を検討した。

 今回の辞任は、ファフファーフ首相が汚職疑惑を否定し、13日に内閣改造の方針を発表した矢先であった。同首相は辞任の意向を示した後、ナフダ党への報復として、15日に同党の閣僚全員を解任した。

 首相とナフダ党の対立が激化する最中、一部の議会会派がナフダ党のガンヌーシー国会議長に対する不信任動議を提出した。

 

図 ナフダ党と首相及び各議会会派との関係図

  ※括弧内の数字は議会会派の議席数(6月25日時点)を示す。

  

評価

 今年2月就任のファフファーフ首相はわずか5カ月で交代することになった。同首相は所属政党のタカットル党が昨年の議会選挙で無議席となったため、政権運営で議会第1党のナフダ党と協力せざるを得なかった。一方、ナフダ党は、汚職疑惑がある首相との連携が党へのイメージ悪化につながることを懸念し、首相を早期に交代させる必要があった。

 現在、サイード大統領は新首相の任命準備を進めているが、議会ではナフダ党と協力する会派と、対立する会派に分かれている。両グループとも過半数(109議席)前後の議席数しか持たないため、現在の対立関係が新内閣への信任投票や各政策の議会採決に混乱をもたらすと予想される。そして、新内閣が議会承認を得られなかった場合、議会選挙の再実施の可能性も考えられる。

 こうした政治混乱は、経済再建策の実施にも影響するだろう。経済状況は新型コロナウイルス感染症の抑制策により、この数カ月で悪化した。政府は、2020年のGDP成長率をマイナス6.5%、財政赤字を7%(対GDP比)と予想する。今後党派対立により、経済再建策が遅れるとなると、国民間で政治不信が高まり、街頭デモが活発化することも懸念される。

 

 【参考情報】

*関連情報として、下記レポートもご参照ください。

 <中東分析レポート>【会員限定】

・「2019年チュニジア大統領・議会選挙――非主流派の勝利、続く党派対立」R19-07

 

(研究員 高橋 雅英)

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