中東かわら版

№40 トルコ・カタル:エルドアン大統領のタミーム首長訪問

 2020年7月2日、トルコのエルドアン大統領がカタルを訪問し、同国のタミーム首長と会談した。同大統領の外遊はCOVID-19感染拡大後初めてとなり、アルバイラク財務相、アカル国防相、アルトゥン大統領府通信局長、カルン大統領府報道官、フィダン国家情報機構長官がこれに同行した。会談は非公開とされ、トルコでは事前に「友好的かつ兄弟的な二国間の相互関係の強化を図る」ものと報じられ、一方のカタルでは、関係閣僚参加の下、経済・投資・エネルギー・国防等の分野を中心とした二国間関係の強化、またパレスチナ・リビア・シリア・イエメン等の地域情勢について協議されたと報じられた。

 

評価

 COVID-19感染拡大防止の一環で移動制限が課された中でも、トルコ・カタルの両首脳は頻繁に電話会談を行っていた。今般、エルドアン大統領がCOVID-19発生後の初の外遊先としてカタルを選んだ理由は、リビア・地中海情勢をめぐって緊張が続く中、カタルと利害一致を確認し、連携強化を図るためだったと考えられる。地中海の天然資源を確保したいトルコは、リビア情勢をめぐってUAE・エジプト・フランスと対立関係にある状況下、友好国カタルとの関係強化を重要な外交戦略の一つと捉えている。加えて、COVID-19感染拡大による通貨リラの下落、対外債務の増加や外貨準備高の減少等、経済的な課題が山積する中、カタルから経済支援を引き出す狙いもあるだろう。一方のカタルは、トルコとのパートナーシップ強化を通じて、イスラエル(ネタニヤフ政権)による西岸地区併合の行方が注目されるパレスチナ、内戦中のリビア・シリア・イエメンといった地域における課題での自国のプレゼンスを強める思惑があると考えられる。

(研究員 金子 真夕)
(研究員 高尾 賢一郎)

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