中東かわら版

№26 イラン:ガーリーバーフ国会議長選出とその意味

 2020年5月28日、イラン国会(290議席、任期4年間)は、260票中230票の圧倒的多数で、ガーリーバーフ(テヘラン市選挙区選出。保守派)を新しく国会議長に選出した。

 イランでは2020年2月21日に第11期国会議員選挙が実施され、その結果、全290議席の内、218議席が保守派で占められた(詳しくは中東分析レポートR19-12【会員限定】参照)。こうした中、5月27日に国会は、ロウハーニー大統領、ライーシー司法府長官らの臨席の下で開会した。開会に際し、ハーメネイー最高指導者は「経済と外交」が重点分野であるとメッセージを送った。ロウハーニー大統領は、国会はイスラーム型民主主義の象徴であり国民に奉仕する役目があると述べ、行政、司法、立法の三権が協調することの重要性を強調した。

評価

 ガーリーバーフは、2月の国会議員選挙で全選挙区最多となる126万5287票を獲得するなど、有権者の支持を集める保守派の政治家である。同氏は、1961年北東部ホラーサーネ・ラザヴィー州トルガベ生まれで、イラン・イラク戦争(1980-1988年)の前線で兵役に従事した後、1982年に革命防衛隊に入隊した。その後、ハーメネイー最高指導者からの信頼を得て、革命防衛隊空軍司令官(1997-2000年)、治安維持軍(警察)司令官(2000-2005年)、テヘラン市長(2005-2017年)等を歴任した。実績を元に、2005年、2013年、2017年に3回大統領選挙に出馬した。いずれの選挙でも落選(2017年は選挙戦から撤退)したが、2013年にはロウハーニー大統領に次ぐ第2位(得票率16.56%)と健闘し、全国レベルの知名度を有する。

 今般、ガーリーバーフの国会議長選出により二権(司法・立法)の長が保守派で占められたことで、①内政、②外交への影響が考えられる。①内政面では、ロウハーニー大統領による議会への影響力の減退が見込まれる。護憲評議会、及び公益判別評議会の権限が強いとはいえ、法案の審議、予算策定、及び閣僚の信任等において国会は所定の権限を有する。このため、ロウハーニー大統領による議会運営に支障をきたす恐れがある。また、②外交面でも、米国との緊張関係が続く中、イランが対米姿勢を更に硬化させる可能性は排除されない。同様に、従来よりイラン核合意(JCPOA)に懐疑的な保守派が大勢を占める国会が、破綻過程を辿るJCPOAを支持する保証はどこにもないといえ、今後、その維持は更に困難になるだろう。

 

【参考情報】

*関連情報として、下記レポートもご参照ください。

 <中東分析レポート>【会員限定】

・「イラン第11期国会議員選挙の結果とその影響―有権者の投票行動に着目して―」R19-12

(研究員 青木 健太)

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