中東かわら版

• 2020その他
• 公開日:2020/04/24

　中東各国が、新型コロナウイルス感染（COVID-19）拡大防止に向けた取り組みとして、各種移動制限を継続している。一方、24日（23日の日没時）に開始するラマダーン月を迎えるにあたり、一部の国では移動制限が変更される見通しだ。現在の主な移動制限とラマダーン月における変更は下表の通り。

 

表　中東各国の現在の主な移動制限（●）とラマダーン月の移動制限変更（◎）

国名	概要
アフガニスタン	●各州封鎖 ●外出禁止（-5/9）
アルジェリア	●アルジェ県他8県外出禁止（15-7時） ●ブリーダ県終日外出禁止（-4/29）
イエメン	●南部外出禁止
イスラエル	●各都市封鎖 ◎ムスリム地区で夜間商店閉鎖
イラク	●各都市封鎖 ◎食料品店の営業可（-5/22）
イラン	●各都市封鎖
エジプト	●夜間外出禁止（-5/23） ◎公共交通機関（6-21時） ◎週末のみ商店営業可（-17時）
オマーン	●マスカット県封鎖（-5/8,10時） ●ジャアラーン・バニー・ブー・アリー封鎖
カタル	●一部工業地区封鎖
クウェイト	●各都市封鎖 ●外出禁止（16-8時） ◎食料品宅配可（17-1時）
サウジアラビア	●リヤド他主要都市封鎖 ●外出禁止（15-6時） ◎外出禁止（17-9時） ◎マッカの聖モスク・マディーナの預言者モスクでの夜間礼拝可（人数制限有）
シリア	●各都市封鎖 ●夜間外出禁止（-5/22）
チュニジア	●外出禁止（18-6時、-5/3） ◎外出禁止（20-6時）
トルコ	●アンカラ・イスタンブル他29県外出禁止（-4/27） ◎日没前の公共交通機関制限
バハレーン	●外出禁止
パレスチナ	●外出禁止
モロッコ	●外出禁止（-5/20）
ヨルダン	●県境封鎖 ●夜間外出禁止（南部一部都市を除く） ※4/24のみ全国24時間外出禁止
リビア	●外出禁止（14-7時、-4/27）
レバノン	●夜間外出禁止（20-5時）
UAE	●夜間外出禁止 ●ドバイ封鎖

出所：報道をもとに作成

 

※1：外出禁止に関して、多くの場合、治安維持・インフラのための労働、及び食料品・医薬品・生活必需品の販売や購入目的の場合は除く。ただし外出回数・人数に制限あり。

※2：飲食店は持ち帰り販売のみ。

※3：集団での礼拝やイフタールは概ね禁止。ラマダーン月への全般的な対応については『中東かわら版』No.8を参照。

 

評価

　上表の通り、各国において現行の都市封鎖・外出禁止はラマダーン月も継続される。毎日の日没時にとる断食明けの食事（イフタール）や、その後に行われる夜間礼拝（タラーウィーフ礼拝）も自宅で行うよう、すでに当局より指示が出されている（例外はサウジの二大聖地での夜間礼拝許可）。一方、ラマダーン月に食事量が増える現地事情に鑑み、一部の国では食料品の営業や食料品購入のための外出制限を緩和する措置も見られる。

　ラマダーン月の日中は、断食の義務に伴って外出機会が減少する。一方、この反動として夕刻から深夜にかけては食事や社交を目的とした外出機会が増加するのが通例だ。各国にとっては、COVID-19拡大防止とラマダーン月の生活の両立にあたり、食料品提供に関しては規制を緩和しつつ、これが過剰な外出につながらないための措置を講じることが肝要である。

（中東調査会）