中東かわら版

№198 トルコ:新型コロナウイルス対策(14のルール)励行を呼びかけ

  

 トルコ保健省は増加し続ける感染を食い止めるため、国民に対して新型コロナウイルスへの感染防止対策として、14項目ルールを策定し、励行するよう呼び掛けた。同ルールは、強制広告として現在トルコのテレビやSNSを通じで随時放映されている他、イラスト付きのポスターを地下鉄の駅や街中の人目に付くところに掲示する等、予防対策の徹底化が図られている。

 また、致死率が高い高齢者(65歳以上)にはマスクとコロンヤ(筆者注:香水のようなものだが、アルコール度数60度から80度のものが殆どのため、アルコール消毒液の代替品としてトルコ国内では品薄となっている。通常は、来客の手にふりかけて使用する)を無償で配布するとともに、外出を禁止し、違反した場合には高額の罰金を科す措置を採っている。これ以外にもショッピングモールの閉鎖、バー・ナイトクラブの閉鎖、小中高の一斉休校および、国営放送TRTおよびインターネット上で学年、教科別での授業配信を開始した。

 宗務庁も金曜礼拝の中止や、メッカ巡礼(ウムラ)をしたサウジアラビアからの帰国者のケア(筆者注:トルコで6例目の感染が確認されたのはウムラからの帰国者だった)等、政府の政策に全面協力している。

 ただし、庶民の台所とも言えるバザール(市場)は閉鎖せず、営業時間の短縮や出入り口の数を減らす、野菜や果物を利用客が手で触ることを禁止するなどの措置をとっている。

 また、欧州に滞在する自国民に対してはチャーター機で帰国させ、帰国後は14日間隔離する検疫を講じている。

 3月26日、ファフレッティン・コジャ保健相は、25日現在、トルコ国内での新型コロナウイルス感染者数が2433名、死者数が59名となったことを明らかにした。

 

<14項目のコロナウイルス対策>

①  頻繁に石鹸水で手を洗うこと(20秒以上)

②  風邪の症状がある人とは3~4歩以上離れること

③  咳やくしゃみをするときは、使い捨てのもの(ティシュなど)で鼻と口を覆うこと。持っていない場合は、ひじの内側を使用して口元を押さえること

④  握手や抱擁(ハグ)等の密接な身体接触は避けること

⑤  目、鼻、口などを触らないこと

⑥  海外旅行、出張などは中止もしくは延期すること

⑦  国外から帰国後14日間は自宅で待機すること

⑧  頻繁に換気を行うこと

⑨  着用した衣服等は、通常の洗濯用洗剤で60度から90度の高温で洗濯すること

⑩  ドアノブ、洗面台、テーブル、椅子など、使用頻度の高い部分は毎日石鹸水で清掃すること

⑪  風邪の症状がある場合は、高齢者や慢性疾患を持つ人との接触を避け、マスクの着用なしでの外出はしないこと

⑫  タオルなど、私物の共有はしないこと

⑬  水分補給、栄養バランスの取れた食事、睡眠時間の確保につとめること

⑭  発熱、咳、息苦しさなどの症状がある場合はマスクを着用のうえ医療機関に連絡すること

  また、NTVは、上記以外にも専門家の意見として、野菜や果物は一つずつ洗ってから冷蔵庫にしまう、コロンヤで手を消毒する(60%から90%のアルコールを含んでいれば除菌できる)、使用中のマスクおよび、マスク着脱時やズレた時など、極力マスクを触らないようにする、仕事や外出先から帰宅後はすぐにシャワーを浴びる、家の中で靴を履かない、コートなど洗濯が難しいものは、すぐにクローゼットにしまわずハンガーにかけて数時間外に干す、携帯電話(電話機)は、ハンカチや綿棒等で頻繁にアルコール消毒を行う、エレベーターは1日数回掃除する。出来る限りエレベーターは使用せず、乗るときは人と向かい合わないように、後ろ向きに立つようにする、等の呼びかけも行っている。

 

評価

  

 トルコでは、3月11日に国内初の新型コロナウイルス感染患者が確認された。そこから約2週間で、矢継ぎ早に様々な対策を打ち出している。今般、コロナウイルスへの対策として公表した14項目についても、WHOの勧告に沿った対応策を分かりやすく簡潔に示しており、国民が、具体的に何をどうすれば良いのか、について周知している。初期の感染症対策としては、綿密でスピーディーな対応と言えるだろう。

 ただし、感染爆発を引き起こす懸念も存在する。現在、深刻な状況にある欧州との経済的、人的往来が活発なトルコでは、欧州渡航歴がある者または、欧州滞在者で希望帰国している者も多数いる。帰国後2週間は、検疫のための隔離が義務付けられてはいるものの、検疫終了後に発症し、拡散することも十分考えられる。国内初の感染者確認から2週間でその数が劇的に増加していることからも、予断を許さない状況にある。                                                                                                                                                                    

(研究員 金子 真夕)

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