中東かわら版

№197 GCC:コロナ関連の禁則事項と逮捕報道

 新型コロナウイルス流行の拡大を防ぐべく、GCC各国では諸外国との往来の停止、教育機関やモスクの閉鎖に続く様々な禁則事項を設け、これによって逮捕報道も出始めた。主なものは以下表の通り。

 

禁則事項

逮捕報道

オマーン

●葬儀・結婚式含む集会

●飲食店の営業(持ち帰りは可)

 

カタル

●公園・ビーチでの集会

●一部地域での飲食店の営業

●検疫・隔離を無視した自国民10名を逮捕(実名報道)。伝染病予防及び社会保護に関する刑法違反

クウェイト

●17~4時の外出(3/21以降)

●食料品の輸入

●外出禁止令を破ったエジプト人9名を逮捕

サウジ

●21日間の19~6時の外出(3/23以降)

●娯楽施設の営業

●葬儀・結婚式含む集会

●飲食店・店舗の営業。薬局と食料品店除く

 

バハレーン

●5人以上の集会。家屋の前や公道での座り込み含む。葬儀は親族のみ出席

●公園・ビーチでの集会

●消毒剤及び手指消毒剤の輸出

●労働・診療及び医薬品・生活必需品の購入以外の外出

 

UAE

 

●不要不急の外出を控えるドバイ政府の呼びかけを罵る動画を投稿した外国人女性を逮捕

 

評価

 GCC各国では1月下旬より、不要不急な外出やマスク等の買い占め、特定の外国人に対するヘイトスピーチ、また病状に関する当局への虚偽報告を行わないよう政府が呼びかけてきた。しかし各国では感染者数が増加し、サウジでは3月24日、初の死者とともに、一日の新規感染者数としては同国最多となる205名の発症が報告された。こうした状況下、UAEを除く各国は集団感染の発生や感染経路の拡大への警戒に基づき、表のような人の移動を制限する措置を進めている。一方、これを違反した際の罪状は、広く社会の扇動と捉えられる向きが強いようだ。国民は容易に反社会的存在と扱われうる環境で緊張を強いられるが、一方で各国政府は数億~数十億ドル規模の拠出を、国民への「還元」も含めたコロナ対策として進めると決定した。例えばUAEのシャルジャ首長国は、今後3カ月間の電気代10%引き下げを発表した。各国の国民としては、こうした「アメ」への期待でもって上記の緊張を耐え忍ぶことになるだろう。

(研究員 高尾 賢一郎)

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