№194 中東:石油価格の急落と産油国
2020年3月9日、10日の世界の市場で原油価格が1バーレル30ドル程度にまで急落した。これに関し、公開情報を通じて確認できる中東の主な産油国の2020年度予算での原油価格の見通しは以下の通り。なお、イラクについては2019年秋からの政情の混乱により、2020年度の予算が成立していない。
国名 |
2020年度予算の想定1バーレルあたりの原油価格(ドル) |
歳入の石油収入依存度(%) |
イラン |
52 |
12.5 |
イラク |
56(2019年度) |
85-90(2019年度) |
クウェイト |
55 |
87 |
カタル |
55 |
N.A |
サウジアラビア |
55 |
61.5 |
オマーン |
58 |
72 |
アルジェリア |
50 |
60(炭化水素収入全体で) |
評価
中東諸国は、高い人口増加率や開発事業への投資などの歳出圧力が強い中、2014年以来の原油価格の低迷に苦しんできた。そうした中、各国とも慎重な見通しに基づいて予算を編成しているようだ。しかし、今般の価格の下落によりそうした見通しをも超越する安値に達しており、これが長期化すると各国の財政は打撃を受けることとなる。ただし、国ごとに生産量や歳入の石油収入依存度が異なる。また、イランのようにアメリカによる制裁のため原油輸出そのものが困難な国や、イラクやアルジェリアのように政情が混乱している国もある。原油価格の低迷が長期化すれば、産油国の中でも財政・経済上の余裕の乏しい国から悪影響が顕在化してゆくだろう。
(中東調査会)
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