中東かわら版

№184 中東:新型コロナウイルスへの各国の対応#2

 中国で発生した新型コロナウイルスの問題は、イランでも多数の感染者・死者が出るなど中東諸国でも深刻な問題となっている。各国は、日本・日本人を対象とするものも含む様々な措置を講じている。本稿執筆時点で中東諸国がとっていることが確認できる諸措置は以下の通り。

国名

主な措置

アフガニスタン

  • イランとの国境を閉鎖した。

イラン

  • テヘランを含む国内14都市で、学校、大学、映画館、劇場が閉鎖された。また、病院230カ所を新型コロナウイルスの治療拠点に指定するとともに、公共交通機関の殺菌処理を実施している。中国発着の全便の一時停止を継続している(1月31日より)。

トルコ

  • ターキッシュエアラインズ(THY)は、イランのイスファハーン、マシュハド、シーラーズ、タブリーズへの運航を一時停止(24日~27日)。テヘランについては、毎日運航から2回に減便した。
  • トルコ国鉄(TCDD)23日の17時より、イランとの国境を一時閉鎖し、トランス・アジアエクスプレスのヴァンおよび、テヘランからの貨物列車も含む、鉄道の乗り入れを見合わせている。

イラク

  • イランからの陸路の入国を2週間禁止(23日)。ただし、イランとの貿易は継続。
  • クウェイトとの陸路の国境通過地点を閉鎖(24日)。

クウェイト

  • イラン、イラクからの全船舶の入港を禁止。
  • イラク、韓国、タイ、イタリアとの航空便全便を運休(24日)。

バハレーン

  • ドバイ、シャルジャの両空港との航空便全便を、48時間運休(24日)。
  • バハレーン国際空港からの入国者全員に検査。
  • イランからの入国したバハレーン人2人の感染を確認(24日)。

カタル

  • イラン、韓国からの入国者に14日間の隔離を要請(24日)。

UAE

  • イラン、タイへの渡航を禁止(24日)。
  • テヘランを除くイランとの航空便を無期限運休(25日)。

サウジアラビア

  • イランへの渡航差し止め。14日の隔離期間を経ていないイランからの外国人の入国を禁止(22日)。

オマーン

  • イランとの間の航空便全便を無期限で運休(24日)。
  • イランから入国したオマーン人2人の感染を確認(24日)。

イエメン

  • 特になし。

シリア

  • 特になし。

レバノン

  • 特になし。

ヨルダン

  •  一時的な予防措置として、中国、イラン、韓国の市民権を持つ者、およびこれら3カ国を訪れた外国人旅行客の入国を拒否すると発表(24日)。

イスラエル

  • 入国の際にタイ、シンガポール、香港、マカオ、中国から帰国したイスラエル人に対する検疫を継続中。
  • 北京への直行便の延期を4月24日まで延期、香港への直行便を3月20日まで欠航。バンコクへの直行便を、1日2便から1便に縮小。
  • 日本と韓国からの入国拒否は発表された後、撤回された(22日)。
  • イタリアへの渡航中止を勧告(23日)。
  • イスラエル入国日から数えて過去14日間の間に、中国、香港、シンガポール、マカオ、韓国、日本を訪問した者に対し、14日間の自宅待機が指示されている(23日)。
  • イスラエル到着日から数えて過去14日間の間に、韓国と日本に滞在した者のうち、イスラエルの非居住者、あるいは市民権を持たない者の入国が拒否されている(24日~)。
  • 台湾、オーストラリア、イタリアを、過去14日以内に訪問し、発熱などの症状が出ている者に対し検査を受けるよう指示している(24日~)

パレスチナ

  • カラーマ通過所(パレスチナ・ヨルダン)にて、中国、日本、香港、台湾、シンガポール、マレーシア、フィリピン、韓国、マカオから来た者に対して検査を実施中。陰性反応が出た者は、エリコにある所定の場所で、当該国の出国日から数えて14日間待機させる。陽性反応が出た者は、発症者を収容する場所に送られる。

エジプト

  • エジプト航空、2月27日から中国との航空便を再開予定。

リビア

  • 石油・ガス会社の「メリタ」が外国人労働者の派遣を無期限で停止(25日)。

チュニジア

  • イタリアとの間の航空便の停止を検討中。

アルジェリア

  • 特になし。

モロッコ

  • 特になし。

 

評価

 イランでの感染者・死者数の増加を受け、主に近隣諸国、湾岸諸国が同国との往来に規制を導入した。また、最近感染者数が増加しているイタリア、韓国のような諸国との往来についても、今後影響が出る可能性がある。日本についても、イスラエルが入国を拒否している。入国拒否でなくても、今後、一定期間の隔離や経過観察を科す国が出た場合、短期間の訪問は不可能となる。また、中東にはトルコ、UAE、カタルのように世界的な航空便の運航の拠点となっている国もあり、航空便の運航状況にも注意が必要だろう。なお、ウイルスの感染の広がりも、各国の措置も状況が刻々と変化するため、諸措置についても常時事前に確認することが望ましい。

 

(中東調査会)

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