中東かわら版

№183 オマーン:ハイサム国王の所信表明演説

 2020年2月19日、オマーンのハイサム国王は即位後初となる所信表明演説を行った。1月10日のカーブース前国王の崩御から40日間が経ち、服喪期間が終わることを受けたものである。同演説の概要は以下の通り。

●カーブース前国王の尽力により、オマーンは公正な経済・社会を築き上げ、持続的な発展を通して国民の生活水準を向上させた。我々はこの遺産を継承する。

●他国との関係についても、やはり前国王にならい、全ての国との善隣外交、他国の内政への不干渉、及び他国の主権の尊重を方針とする。

●オマーンはGCC各国の指導者と手を取り合う他、アラブ連盟を支援し、アラブ諸国の指導者との連帯を維持していく。

 

評価

 演説の大部分はカーブース前国王の事績を称えるものである。内外政の基本方針は同前国王時代のものを継承することが確認され、政治改革等の具体的な政策への言及は見られなかった。外政については、GCCを中心に、アラブ諸国との関係を強化することが強調された。これは、ともすればサウジを中心とする反イラン陣営への擦り寄りにも聞こえるが、服喪期間においてもオマーン・イラン間のハイレベル交流は維持されてきた(1月26日のアラウィー外務担当相のテヘラン訪問、1月27日のゴラムレザー・キャリーミー・イラン副教育相のマスカット訪問、2月15日のミュンヘン安保会議での外相会談等)。服喪期間を終え、オマーンの動きが活発化するにしても、従来の外交姿勢が大きく変わるとは考えづらい。

 なお服喪期間には、イラクを舞台としたイラン・米国間の緊張、米国による中東和平案の発表、シリア・トルコ間の軍事的緊張等、域内に多くの騒擾が見られたが、オマーン政府はこれらに関してほとんど言及してこなかった。中立・ロープロファイルな外交政策を基本方針とするオマーンとしては、服喪期間を背景に立場表明を避けることができたとも言えよう。

(研究員 高尾 賢一郎)

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