中東かわら版

№170 オマーン:カーブース国王の崩御とハイサム新国王の即位

 2020年1月10日、オマーン国営通信はカーブース国王の崩御を伝えた(病死。ただし病名は未発表)。国家基本法(憲法に相当)にならい、新国王の選出は空位から3日以内に王族評議会で決定されるが、そこで合意に至らなければ、国王が生前に後継者について記した封書を開封して、書かれている人物を国王に指名する。11日に開かれた同評議会では、故カーブース国王の封書が開封され、この結果、従兄弟のハイサム・ビン・ターリク遺産・文化相が新国王に指名された。

 

評価

 カーブース国王の後継者に関しては、2017年3月に国王代理に指名されたアスアド副首相を最有力候補と見る向きが強かった。実際、日本との関係においても2019年10月の天皇陛下即位礼正殿の儀に参加する等、国王代理を務めていた。一方、ハイサム新国王は文化・遺産相として国内の観光政策等を担い、さらに観光政策を柱の一つとする国家改革計画「オマーン・ビジョン2040」の事実上の主導者としてプレゼンスを示してきた人物である。この点、外政面よりも内政面の舵取りを見込まれた人物が後継者に指名されたと見ることが可能である。

 このように、新国王の即位はスムーズに行われたものの、カーブース前国王に集中していた権力をハイサム新国王が全て継承するかどうかはまだ明らかになっていない。最も注目されるのが、カーブース前国王同様、ハイサム新国王が外相・財相・国防相を兼任するかどうかである(なお国家基本法では、国王の外相・財相・国防相の兼任について定められていない)。ハイサム国王は、前国王の外交方針の継承、すなわち全方位外交や地域のバランサーとしての役割を継承すると早々に宣言したが、これ以前に、同国王がどの程度の役割を担うかが重要となるだろう。

(研究員 高尾 賢一郎)

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