№169 アルジェリア:ジャラード内閣の成立
2019年12月28日、タブーン大統領はアブドゥルアジーズ・ジャラードを首相に任命し、2020年1月2日に新内閣を発表した。ジャラード内閣は以下の通り。なお、国防相はこれまでの通例に従って大統領が兼任すると思われる。
※カラー部分は新任閣僚。※副大臣、大臣付き書記は省略。
首相 |
アブドゥルアジーズ・ジャラード |
元外務省事務局長(2001-2003)、元大統領府事務局長(1993-1995)、元大統領顧問外交担当(1992-1993)、元政治学教授 |
外相 |
サブリー・ブーカードゥーム |
(2019年4月~) |
内務・地方自治体・国土計画相 |
カマール・ベルジュード |
前住宅・都市計画相 |
法相 |
ベルカーシム・ゼグマーティー |
(2019年7月~) |
財務相 |
アブドゥルラフマーン・ラーウィヤ |
元財務相(2017-2019年3月) |
エネルギー相 |
ムハンマド・アルカーブ |
(2019年4月~) |
ムジャーヒドゥーン相 |
タイイブ・ザイトゥーニー |
(2014年5月~) |
宗教問題・ワクフ相 |
ユースフ・ベルマフディー |
(2019年4月~) |
国民教育相 |
ムハンマド・ウジャウート |
スポーツ教師 |
高等教育・科学研究相 |
シャムスッディーン・シトゥール |
物理学教授 |
職業訓練相 |
ホヤーム・ベンフリーヤ |
アルジェ大学政治・国際関係学部学部長;女性 |
文化相 |
マリーカ・ベンドゥーダ |
大学教授(哲学);女性 |
郵便・情報通信相 |
ブラーヒーム・ブームザール |
経済学者 |
青年・スポーツ相 |
サイイド・アリー・ハールディー |
1983年生まれ |
国民連帯・家族・女性問題相 |
カウタル・クリク |
弁護士;1982年生;女性 |
産業・鉱業相 |
ファルハート・アイト・アリー・ブラーヒーム |
コンサルタント |
農業・地方開発相 |
シャリーフ・オマーリー |
(2019年4月~) |
住宅・都市計画相 |
カマール・ナスリー |
住宅・都市計画省事務局長 |
貿易相 |
カマール・リジーグ |
経済学教授 |
通信相兼内閣報道官 |
アンマール・ベルヒマル |
元アルジェ大学法学部教授:元ジャーナリスト |
公共事業・運輸相 |
ファールーク・シヤーリー |
元公共事業・運輸相(2013-2014) |
水資源相 |
アルズキー・ビラーキー |
水関連施設エンジニア |
観光・伝統工業相 |
ハサーン・メルムーリー |
元観光・伝統工業相(2017-2018) |
保健・人口・病院改革相 |
アブドゥルラフマーン・ベンブージード |
整形外科教授 |
労働・雇用・社会保障相 |
アフマド・シャウキー・アーシク・ユースフ |
国民社会保障基金事務局長 |
議会関係相 |
バスマ・アズワール |
現人民議会議員;1983年生;女性 |
環境・再生可能エネルギー相 |
ナシーラ・ベンハッラート |
オラン大学教授;女性 |
漁業・漁業生産相【新設】 |
サイイド・アフマド・ファルーヒー |
元農業・地方開発・漁業・水産資源相(2015-2016);漁業・水産資源相(2012-2015) |
小企業・スタートアップ・知識経済相【新設】 |
ヤーシーン・ジャリーダーン |
1993年生;起業家 |
(出所)国営APS通信をもとに筆者作成。
評価
今次内閣は、ブーテフリカの辞任(2019年4月)後、タブーン大統領の就任を経て初めて成立した正式な内閣となる。首相に任命されたアブドゥルアジーズ・ジャラードは特定政党に属しておらず、政治学の教員歴があり、1990年代から2000年代にかけてアリー・カーフィー大統領・ゼルーアル大統領・ブーテフリカ大統領の下で大統領顧問、大統領府事務局長、外務省事務局長を務めたことがある。ジャラード内閣の特徴は3点にまとめられるだろう。
第一は、大部分のポストで入れ替えがあったことである。前内閣から留任したのは、政治経済政策の運営上最も重要なポストである外相、法相、エネルギー相、農業・地方開発相、現体制の重要支持基盤である退役軍人を取り扱うムジャーヒドゥーン相、そして現在は比較的非政治的なポストとされる宗教問題・ワクフ相のみである。第二は、各部門の専門家が多く、党派色がほとんどない点である。政党所属者はバスマ・アズワール議会関係相(未来戦線党議員)のみである。第三は、1980年代や1990年代生まれの若者が4名も任命されたことである。
これらの特徴から、タブーン大統領はブーテフリカ時代の政府との違いや、抗議デモに参加した若者たちの要求の受け入れを図ったと考えられる。タブーン大統領が軍の影響力から独立してジャラード内閣を運営する意志があるのか、または新政府の「革新性」は表面的に過ぎないのかどうかは、例えば今後行われる軍人事の発表や、輸出入や投資に関わる政策から判断できるだろう。
(研究員 金谷 美紗)
◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/