中東かわら版

№152 サウジアラビア:サウジアラムコがIPOの売出株価を発表

 2019年12月5日、国営石油会社サウジアラムコは、国内証券取引所「タダーウル」での売出株価を32リヤル(1リヤル≒29円≒8.53ドル)と決定した。総株数2,000億の1.5%にあたる30億株を売り出すことで、調達額は史上最大の256億ドルとなる。

 アラムコ社は11月3日にタダーウルでの上場決定を発表、同17日にサウジ国内及び湾岸諸国からの公募(個人0.5%、機関1%)を開始した。同28日に締め切られた個人分には126.4億ドル(474億リヤル)、12月4 日に締め切られた機関分には504億ドル(1,890億リヤル)の応募があった。2020年には海外市場での上場(売却株価は国内市場の1.5%分と合計で5%)が計画されている。

 

評価

 アラムコ社のIPO(新規株式公開)に関しては、9月の石油施設攻撃により、サウジへの投資はリスクが高いとの声も上がる中、当初目標とされた海外上場は延期となり、企業資産価値も目標の2兆ドルに対して1.7兆ドルとなるなど、先行きが不透明な面が見られた。しかし、今次の売却株価の公募締め切りと売出株価の決定を経て、なにはともあれ、まずは国内上場で目標調達額を達成したことで、サウジ側としては安堵したことであろう。

 アラムコ社のIPOは、2016年に開始した国家改革計画「サウジ・ビジョン2030」の目玉事業の一として、サウジで現在進められる「開放政策」の一環として、また以上を主導するムハンマド皇太子の「功績」として、実現が目指されてきた。IPOで調達された資金は、アラムコ社のルマイヤンCEOが総裁を兼務する公共投資基金(Public Investment Fund)を通じて、ビジョンの各種事業に配分予定とされる。したがってIPOの成否は、アラムコ社の経営や国家の財政などにとどまらず、現在のビジョン2030の成否、ひいてはムハンマド皇太子への評価に直結しうる問題だと言える。

 

【参考】

『中東かわら版』

№94「サウジアラビア:石油施設攻撃への反応」

№95「サウジアラビア:石油施設攻撃への反応 #2」

№141「サウジアラビア:サウジアラムコのIPOをめぐる評価」 

『分析レポート』

No.R19-06「GCC 各国の 「ビジョン」」

(研究員 高尾 賢一郎)

◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/

| |


PAGE
TOP