№150 アフガニスタン:邦人の被害を含む治安事案の発生
2019年12月4日現地時間午前、東部ナンガルハール州都ジャララバード市第1区で、NGOペシャワール会の中村哲医師が乗車する車両が襲撃され、同医師が負傷した。
独立系『トロ・ニュース』、及び『アリアナ・ニュース』の速報によると、正体不明の武装した男らが中村医師の乗車する車両を襲撃し、同医師とその運転手が負傷、アフガニスタン人警護員5人が死亡した。運転手が死亡したとの情報もある。
評価
東部ナンガルハール州は、アフガニスタンにおいて首都カーブル州、西部ヘラート州に次ぐ第3の州(人口約2800万人中約160万人、中央統計局『統計年鑑2017-2018年』参照)である。隣国パキスタン北西部のペシャワール市とアフガニスタンとを結ぶ主要交易路が通り、アフガニスタン国内の幹線道路にも接続された交通の要衝で、日々隊商が行き交い、活発な商業活動が営まれる。
地図 東部ナンガルハール州ジャララバード市
一方、同州では、ターリバーン、及び「イスラーム国」など武装勢力による活動も活発で、近年、治安情勢は常時不安定である。特に、「イスラーム国」は、2015年1月26日にアフガニスタン、パキスタンとその周辺領域に「ホラーサーン州」を設置し同地を主な拠点としてきた。現在、米軍・アフガニスタン治安部隊の合同軍事作戦により次第に勢力が削ぎ落される中、東部クナル州、ヌーリスターン州に移動している模様である。なお、「ホラーサーン州」の構成員の多くは、パキスタン北西部ハイバル・パフトゥンフワー州オラクザイ管区出身のパキスタン・ターリバーン戦闘員と外国人戦闘員であるとされる。
現時点で、本治安事案の実行主体、背景、正確な被害状況は不明である。いずれにせよ、犯行に至った経緯と、イスラーム過激派の動向を含む周辺状況を注意深く観察する必要がある。
【参考情報】
*関連情報として、下記レポートもご参照ください。
<中東かわら版>
・「アフガニスタン:大統領選挙前の動向」『中東かわら版』No.102
・「アフガニスタン:トランプ米大統領がターリバーンから交渉の主導権を奪取」『中東かわら版』No.147
・「アフガニスタン:大統領選挙暫定結果を巡る抗議デモの発生」『中東かわら版』No.148
*12月11日の中東を知るセミナー「アフガニスタン政治の推移、特徴、展望~迷走する2019年大統領選挙と和平プロセス~」(研究員 青木健太)において、最近のアフガニスタン情勢について発表が行われる予定です。
(研究員 青木 健太)
◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/