中東かわら版

№137 サウジアラビア:娯楽産業に向けた投資呼びかけ

 2019年11月12~14日、ムハンマド・ビン・サルマーン財団(MISK)は、「サウジ・ビジョン2030」の一環として、リヤドで第4回グローバル・フォーラムを開催した。そして、参加した国内外の企業・団体に対して、サウジ人口の過半数を占める若年層(30歳未満で51.4%とされる)への投資を呼びかけた。この成果として、アブダビ首長国のスタートアップ企業支援プロジェクト「Hub 71」との間で、二国間の合弁企業設立の促進に係るMoUが交わされる等した。

 またMISKは、娯楽産業が今後サウジの基幹産業の一つになるとの見通しを強調し、2018年4月に着工したリヤド西部郊外の滞在型リゾート・テーマパーク「キッディーヤ」への投資を呼びかけた。キッディーヤは2023年に第一フェーズが完了予定であり、米国のテーマパーク運営会社「シックス・フラッグス」(Six Flags Entertainment Corp)が監修する。

 

評価

 キッディーヤは、サウジ北西部に建設中の「NEOM」に続く、サウジ・ビジョン2030のメガプロジェクトとして注目を集め、今年10月にはサムスングループとの間で80億ドルの投資に係るMoUが交わされる等、海外企業の進出も活発化している。

 サウジ政府には、キッディーヤに代表される娯楽産業を、①若年層のための雇用創出、②若年層からの支持獲得、③観光による収入増、以上の方法として活用したいとの思惑があるだろう。とりわけ③については、今年9月に観光査証の発給を開始し(『中東かわら版』No.104)、海外からの訪問者の増加は見込めるものの、現在の国内状況では、インバウンド消費の機会が一部都市の高級ホテル等に限られている。「お金を使う」場所を新たに設けることで、インバウンドと消費の連携を促し、さらに年間300億ドルと言われる、サウジ人が海外で消費する金額の一部を、国内での消費に置き換えることを狙っている。 

 

【参考】

『中東分析レポート』No.R19-06「GCC 各国の 「ビジョン」」(会員限定)

(研究員 高尾 賢一郎)

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