中東かわら版

№132 ヨルダン:内閣改造(第4次ラッザーズ内閣)

 2019年11月7日、ラッザーズ政権は内閣改造を実施した。今回の人事では11名が閣僚に任命され、全閣僚の数は29人になった。なお、初めて大臣に任命された者は6名いる(下記表太字)。(全閣僚の情報は、『会員ログイン後』に、中東クロノロジーから閲覧ください)。

 

氏名

役職

備考

ムヒーッディーン・タウク

高等教育・学術研究相

2006年11月から2007年11月まで内閣府担当国務相。

タイシール・ナイーミー

教育相 

2007年11月から2011年7月まで教育相。2010年11月から2011年10月まで上院議員。

サーリフ・ハラーブシャ

環境相

2017年6月から2018年6月資源・鉱物資源相。

イブラーヒーム・スブヒー・シャハーフダ

農業相

農業相と環境相が分離。

ムハンマド・マフムード・イスイス

財務相

2019年5月から11月まで、計画・国際協力相兼経済担当国務相。

アムジャド・アウダ・アダ―イラ

広報担当国務相

新任。ヨルダン王室広報・通信担当国王顧問

ムハンマド・アフマド・ハラーイラ

ワクフ・イスラーム聖地担当相

新任。

バーシム・ムハンマド・トゥワイシー

文化相

新任。

ファーリス・アブドゥルハーフィズ・ブライザート

青年相

新任。ヨルダン大学戦略研究センター研究員。

ウィサーム・アドナーン・ラバディー

計画・国際協力相

新任。実業家。国内外の大学で教鞭経験あり。

ハーリド・ワリード・サイフ

運輸相

新任。米国などでの民間企業経験あり。

評価

 

 今次の内閣改造の契機となったは、9月上旬からおよそ1カ月続いた公立学校教員組合によるストライキだと思われる。政府はこれを抑えきれず、結果的に組合の要求に応じることを余儀なくされた(詳細は『中東トピックス2019年10月号』)。その責任を取るためにマアーニー高等教育・学術研究相が10月に辞任しており、後任の教育相には閣僚経験者が任命されている。

 ヨルダン政府は、IMF(国際通貨基金)とともに財政改革を進めているが、これに反発する大規模なデモやストライキは、ラッザーズ政権がこれまで内閣改造を実施した主な理由であった。そのために、政府は公的支出削減を含む改革を進める傍ら、若者を中心とする雇用拡大、イラクやシリアといった近隣諸国との貿易量増大などに取り組み、具体的な成果を上げようとしている。実際、現在進められている2020年度の予算編成の審議では、経済改革と成長を軸とする雇用創出が目指されている。

 ヨルダンでは内閣の改造や省庁の統合・分離がこれまで頻繁に行われており、これは同国の政治では特段珍しいことではない。しかしながら、閣僚の定期的な人事異動は、公的債務が400億ドルを超える状況下においては、現在の課題の一つである行政・財政改革を効率よく進める上で障害になり得るものである。今次の人事において古参の閣僚を教育関係の大臣に任命する一方で、若者の問題や運輸に関する大臣に研究・実務経験を持つ人物を任命していることは、政府が財政・経済問題への実質的な対応を優先する姿勢が反映されていると言えるだろう。

(研究員 西舘 康平)

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