中東かわら版

№122 イスラエル:ネタニヤフ首相の組閣失敗(2回目)

 2019年10月21日、ネタニヤフ首相は組閣が不可能な旨、リブリン大統領に通達した。4月の組閣の失敗を含め今回で2度目となる。9月17日に行われた議会選挙の後、同首相は25日に組閣の委任を受け、28日間(14日延長可能)の日程で連立協議を行ってきた。

 ネタニヤフ首相による通達を受け、同月23日、大統領は別の人物に組閣を委任する予定である。『ワイネット』や『ハアレツ』紙などの現地紙は「青と白」のガンツ代表を有力視している。

評価

 ネタニヤフ首相は、連立協議を始めた当初、「青と白」、イスラエル・ベイテヌとの連立に向けて積極的に協議してきた。だが、連立形成の見込みがないため、早々に協議を止めると共に、次の組閣(2回目、3回目)に向けて右派・宗教政党の結束強化を図ってきた。10月16日には、シャス、ユダヤ・トーラ連合、ユダヤの家・国家統一党(10月10日、ヤミナが公約通りユダヤの家・国家統一党とニューライトに分離した)に対し、「青と白」との連立に参加しないこと、同党との連立を認めないことを誓約させている。ニューライトのベネット氏とシャケド氏は誓約は不要だとし署名していない。各政党がこの誓約を守るのであれば、仮にガンツ氏が組閣をするにしても、右派・宗教政党と連立協議を行える可能性すらないだろう。さらに、ガンツ氏は17日にネタニヤフ首相が提示した連立政府の案を拒否しているため、リクードとの連立協議を主導することも難しい。

 また、「青と白」は左派政党と連立可能な状況にもない。左派政党(「青と白」、連合リスト、労働・ゲシェル、民主連合で57議席)がまとまっても過半数(60議席)を超えない状況である。そうした中で、イスラエル・ベイテヌ(8議席)が加われば過半数を超えるが、同党はアラブ系の連合リストとの連立を拒否している。また連合リスト(13議席)は、そもそも連立に加わる意思を明示しておらず、超正統派の政党との連立も拒否している状態だ。

 とはいえ、リクードと「青と白」、イスラエル・ベイテヌは、来年度の予算編成の遅れなどを理由に、3回目の選挙は回避すべき点では一致している模様だ。こうした事情や、ガンツ氏が組閣に成功する見通しが立たないことを考慮すれば、重要なのは3回目の組閣だと言えよう。ガンツ氏が2回目の組閣を担うならば、ネタニヤフ首相を筆頭とする右派は同人との連立協議に応じず、3回目の組閣委任に向けて活動する可能性もあるだろう。

 

9月の議会選挙の動向と結果は以下のリンクを参照ください。

中東かわら版「№92 イスラエル:議会選挙前の動向」

中東かわら版「№103 イスラエル:選挙の最終結果と組閣の動き」

(研究員 西舘 康平)

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