中東かわら版

№108 サウジアラビア:ムハンマド皇太子のインタビューとカショギ氏遺族のコメント

 2019年9月29日、ムハンマド皇太子のインタビューが、アメリカCBS放送の番組「60ミニッツ」で放送された。同皇太子の発言は以下概要の通り。

1. サウジアラビア人ジャーナリスト、ジャマール・カショギ氏の殺害

 ※2018年度『中東かわら版』No.66, 68, 70参照

 私は同氏の殺害を指示していない。しかし、実行者がサウジ政府の人間で、私がサウジの一指導者である以上、本件について責任がある。近々、こうした問題の再発を防ぐための措置が講じられるだろう

2. サウジアラムコ石油施設への攻撃と対イラン関係

 ※2019年度『中東かわら版』No.93, 94, 95, 96参照

 石油施設への攻撃は、戦略的目標を伴わない馬鹿げた行為だ。イランと戦争になれば、世界経済が混乱に陥るため、私は非軍事的な方法を通じて緊張緩和を目指したい。アメリカも直接的な戦争は望んでいない。

3. 女性人権活動家の逮捕・禁固

 サウジは法治国家である。逮捕・拘禁されたならば、何かの法律違反があったことを意味する。刑罰を含む処遇については、独立した検察機関が決定するため、私は関与しない。

 

 また、同インタビューの翌30日、カショギ氏の息子であるサラーフ・カショギ氏が、Twitterアカウントに概要以下の通り投稿した

 

この一年間、祖国と敵対する人々が、祖国やその指導者を害する目的で、父の事件を喧伝してきた。これは私にとって受け入れがたいことだ。私は祖国の司法制度を信じており、父と同じく神と、国家及びその指導者に対する忠誠心を持っている。

 

評価

 ムハンマド皇太子の発言に、これまで述べられてきた内容と比べた特段の新しさはない。1や3については、同皇太子への批判ととれる質問が浴びせられ、同皇太子もやや直截に反論するなど、米国とサウジの認識の違いが露呈し、一見すれば緊張感が漂う。しかし、同皇太子とインタビュアー(ノラ・オドネル氏)は2018年にも共演した間柄で、演出的側面もあったと思われる。カショギ事件に対する「私の責任」発言はサウジ内外で大きく報じられたが、これも真相究明や責任の取り方などの説明がない以上、「私の責任」に、「責任を負える地位」以外の意味はない。

 むしろ、新しい展開と言えるのは、カショギ事件の被害者遺族であるサラーフ・カショギ氏が、Twitterに久々の投稿を行ったことであろう。「カショギ事件をサウジ批判に利用するな」とは、これまでムハンマド皇太子がトルコのエルドアン大統領などに浴びせてきた批判であり、今般これが被害者遺族の口から発せられたことになる。サウジ国内のメディアは、サラーフ・カショギ氏の投稿を報じ、彼がムハンマド皇太子やサウジを批判しておらず、むしろ信頼しているとのパブリック・イメージが形成された。カショギ事件が政治利用されているのは間違いないが、これを批判する被害者遺族も同様に政治利用されているのは自明である。

(研究員 高尾 賢一郎)

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