中東かわら版

№104 サウジアラビア:観光査証の発給についての報道 #2

 2019年9月27日、サウジ観光遺産委員会が、観光査証の発給の開始を発表した。『リヤド』紙をはじめとする国内メディアは、本件について概要以下の通り報じている。

  1. 対象国は欧州38カ国、アジア7カ国(日本、中国他)、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの計49カ国。
  2. 査証はオンラインあるいは空港到着時に申請。料金は300サウジ・リヤル(80米ドル)+旅行保険料140サウジ・リヤル。
  3. 360日間有効、90日間滞在可能、年間180日間滞在可能なマルチビザを基本とする。
  4. 宗教についての申告はないが、イスラム教徒以外のマッカ・マディーナの立ち入りを禁じる。また、外国人女性には「慎ましい服装」を求める。
  5. 査証発給は9月28日に開始する。

 

評価

 観光政策、とりわけ外国人に対する査証発給は、インバウンドを中心とした経済効果に加え、「開かれた社会」のアピールに向けた、国家改革計画「サウジ・ビジョン2030」の一つとして注目を集めてきた。今月3日、一部報道で観光査証の発給が近々なされる旨が報じられ(『中東かわら版』No.87)、その後、査証の発給は「年内までに」と修正されたが、本発表内容が本当であれば査証発給に向けた準備が極めて順調に進んだことになる。

 他方、14日のサウジアラムコ社石油施設爆破に代表される、国内の治安面への不安が付きまとう。例えば国内在住者に人気の観光地である南西部には、イエメンから発射されたミサイルが着弾している(『中東かわら版』No.44)。サウジ当局としては、観光客の身の安全に神経を費やすことになるだろう。

 また、以上の治安面の不安を差し引いても、観光地案内や交通機関といった、ソフト・ハード両面の観光インフラがじゅうぶんとは言えない状況下、一般に考えられる観光をサウジアラビアで楽しむためには、旅行会社ないし出張者の接待・接遇の経験がある団体や個人を頼るしか方法はないだろう。この10年ほど、観光政策の一環で、観光遺産委員会は国内の旅行会社のライセンス資格などを厳格化し、観光サービスの質向上に取り組んできた。初めて渡航する外国人観光客にとっては、質の良い旅行会社を選ぶことができるかが重要になる。

(研究員 高尾 賢一郎)

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