中東かわら版

№10 サウジアラビア:女性の自動車所有の現状

 4月8日付の『ワタン』紙が女性の自動車所有の現状について以下概要の通り報じた。

昨年の同時期より所有率が4%上昇したものの、女性の自動車購入は好調とは言えない。背景として、(1)自動車を必要とする女性労働者が少ない、(2)自動車保険の申請受付に長期間が必要、(3)親族のための代理購入の場合、同申請受付が困難なことが挙げられる。とりわけ(2)に関しては、女性の保険申請では自動車にセンサー、エアバッグ、後方カメラ、スペア部品が完備されていること、また低燃費が条件として課されており、これらが女性の自動車購入を妨げる要因とも見られている。

 サウジ自動車販売代理店協会は、女性の自動車への好みが業界の予想と異なること(ピンク色や紫色ではなく白色や銀色の車体を好む、乗用車よりスポーツ車や高級車を好む等)、その対応に取り組みつつ、安全を最優先する観点から申請受付に時間を要するのは仕方ないことを説明した。また所得(の低さ)が原因で、女性の間では中国車が人気だという。

 

評価

 サウジ中央統計局と上記報道によれば、サウジの世帯数は約359万(1世帯平均約5.96人)で、そのうち自動車を所有するのは約329万世帯である。しかし、自動車の所有台数別に見た世帯割合と世帯数によると、約65%(約2,141万世帯)は自動車を1台しか所有していない(※)。2018年6月の女性の自動車運転解禁によってサウジ自動車市場の活性化が期待されたが、顕著な成果は出ていないのが現状である。

 女性の自動車運転解禁は、従来の保守的な社会の在り方からの変革を掲げた現体制による看板政策の一つである。しかしサウジでは女性の自動車運転解禁以前より、そもそも女性の自動車運転は「技術的な問題で危険」という認識が根強く存在し、保険申請に安全面での条件を多く課されていることがこれを示している。制度や宗教的価値観の問題とは別に、サウジ国内で女性の自動車運転が日常化する環境がまだ整っていない様子がうかがえる。 

※参考:自動車を2台以上所有している世帯割合/世帯数

2台:23.3/767,425

3台:7.9/258,808

4台:2.6/86,309

5台:0.9/28,455

6台:0.2/8,149

7台:0.1/2,587

8台以上:0.04/1,271

(研究員 高尾 賢一郎)

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