中東かわら版

№98 イエメン:サウジの石油施設攻撃に関する動き #2

 2019年9月18日、アンサール・アッラー(俗称:フーシー派)が掌握するイエメン軍は、9月14日のサウジの石油施設攻撃についての記者会見を開催し、作戦(名称は「抑止力均衡作戦2」)の詳細を要旨以下の通り発表した。

  •  作戦は、複数の種類の無人機を使用して行われた。諸般の無人機は、通常のエンジンやジェットエンジンの使用したもので、距離・航路、目標値への方向に応じて基本的に3カ所から発射された。
  •  第一の地点からは、第3世代の「カーシフ」型が発射された。同型機は過去の作戦で使用されたことがあるが、これについて発表するのは今回が初めてである。第二の地点からは、「サンマード3」型が発射された。同型機の飛距離は1500~1700kmである。第三の地点からは、ジェットエンジンを使用する無人機が発射された。いずれの無人機も、4つに分裂する高精度の弾頭と偽装・欺瞞機器を装備している。また、敵を混乱させ、攻撃用の無人機を目標に到達されるための欺瞞用無人機複数が使用された。
  •  作戦の詳細は全面的には公表しない。全面公表は適切な時期に行う。
  •  イエメン軍は、侵略同盟・悪の勢力に立ち向かい、サウジとUAEを筆頭とする侵略諸国が侵略をやめなければ、諸国に対する迅速かつ特別な反撃を躊躇しない。UAEの体制に対し、イエメン軍司令部が今後数日なり数週間のうちに反撃作戦の実行を指示したのならば、1件の作戦がお前たちを大きく動揺させ、後悔させるといいたい。作戦はUAEの体制に大きな負担をかけるだろう。我々はドバイ、アブダビを含む、UAEにおける攻撃対象候補が数十カ所ある。

 

評価

 サウジ当局は、9月14日のブカイク、フライスへの攻撃について、イエメンからではなくイランから攻撃が行われたとの見解を示している。その根拠は、攻撃現場から発見された兵器の残骸から、イエメンから発射してもブカイク、フライスに届かない兵器が使用されたと考えられることである。

 アンサール・アッラーが掌握するイエメン軍は、2019年7月上旬に弾道ミサイル、巡航ミサイル、無人機の展示会を開催しており、「サンマード1」(偵察機。航続距離500㎞以上)、「サンマード3」(攻撃機。航続距離1500~1700km)、「カーシフ2K」(イランが開発した「アバービール」起源とされる。サウジ南東部などへの攻撃で使用されている)、「クドゥス1」(巡航ミサイル)などを公開した。イエメン軍は、そこで展示された最新鋭の兵器の一部を今般の作戦に使用した兵器として言及している。

画像1:無人機「サンマード3」。

出典:https://www.alkhabaralyemeni.net/2019/08/26/59361/

画像2:巡航ミサイル「クドゥス1」。

出典:https://afaq.tv/contents/view/details?id=96838

 

 イエメン軍による作戦についての発表では、「サンマード3」について言及があるが、「クドゥス1」が使用されたか否かについての言及はない。また、「クドゥス1」の性能についてはほとんど明らかになっていないが、サウジ南西部のアブハー空港などへの攻撃に使用された実績がある。一方、サウジ当局は「クドゥス1」に類似した残骸を公開し、この種のミサイルではイエメンから発射してもブカイク、フライスには到達しないとの見解をとっている。なお、「クドゥス1」は、イランが開発した「スーマール」型巡航ミサイルのシリーズである、或いはソ連で開発された「Kh-55」のコピーであると考えられてきたが、画像2によると上部に張り出したエンジンや固定翼の大きさ・形状がこれらのミサイルとは異なり、イエメンが独力で巡航ミサイルを開発できないとしても、「クドゥス1」がイエメン国内で独自の発展を遂げているとの指摘もある。

 【参考情報】

フーシー派(正式名称:アンサール・アッラー)基礎資料」 中東分析レポート2019年2号

イエメン:サウジの石油施設攻撃に関する動き」 中東かわら版2019年93号

(主席研究員 髙岡 豊)

◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/

| |


PAGE
TOP