中東かわら版

№94 サウジアラビア:石油施設攻撃への反応

2019年9月17日、サウジでは、14日に発生したサウジアラムコ社の石油施設への攻撃(『中東かわら版』No.93参照)に関する声明が、関係機関より概要以下の通り発表された。

 

1. 外務省

●本事件は、国際社会の平和と安全を脅かすもので、本事件への非難を発表した国々に感謝を伝えたい。

●初期調査によれば、前回の石油施設への攻撃の時と同様(※)、今回使用されたのはイラン製の武器である。

●近く、国連及び専門家を招いて、本件の調査を進める予定である。

※5月15日の事件を指すと思われる(『中東かわら版』No.32参照

 

2. エネルギー省

●本事件によって日量約570万バーレルまで減少した石油産出量は、今月末までに同1,100万バーレル、11月末まで同1,200万バーレルに回復するだろう。

●本事件の背後に何者がいるのかは不明である。

 

3. サウジアラムコ

●備蓄分や他の油田を活用するなどして、石油の供給は滞りなく行われることを保証する。

●本事件によって、少なからぬ数の積み荷が中止となったのは確かである。しかし我々は早期にこの事態を脱却し、石油輸出大国としての地位を維持する。

●我が社が予定する新規株式公開(IPO)への、本件による影響はない。

 

評価

 本事件は、イエメンのアンサール・アッラー(俗称:フーシー派)によるサウジへのこれまでの攻撃の内、物的被害としては最大規模のものと言って良い。このため、日本を含む多くの国から本事件に対する非難声明が出された。サウジ側は、現時点で攻撃の主体者を明言していないが、これまで同様、「イランがフーシー派を支援している」こと、「フーシー派が石油の安定供給を脅かしている」ことを訴えて、イランを世界共通の敵とする認識の定着を目指している様子がうかがえる。

 とはいえ、アンサール・アッラーによる攻撃とそのエスカレートは、サウジ主導の有志連合軍がイエメン戦争で具体的な成果を挙げていないことが原因である。この点、サウジ側が行う「フーシー派による被害」の訴えは、サウジの軍事戦略上の失敗や、対空防衛能力の低さの告白とも言える。

 これによって、イエメン戦争のサウジ側主導者である国防大臣、すなわちムハンマド皇太子の権威が直ちに低下するとは思われない。しかしながら、国家改革計画「サウジ・ビジョン2030」の経済事業における目玉として宣伝されてきた、サウジアラムコのIPO計画がとん挫する事態につながれば(同社は否定しているが)、ビジョン2030の主導者である同皇太子の評価にも影響が及ぶ可能性が高いだろう。

(研究員 高尾 賢一郎)

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