中東かわら版

№91 イラン:第3段階目となるJCPOA履行一部停止を警告#3

 2019年9月4日、ロウハーニー大統領は、9月6日から第3段階目となるJCPOAの履行一部停止を開始すると発表した。同大統領によれば、新しい遠心分離機の製造を含めて、イランが必要とするあらゆる核技術の研究・開発を、国際原子力機関(IAEA)の監督の下でイラン原子力庁が中心となって進める予定である。また、同大統領は、欧州が合意を遵守すればイランも履行一部停止を撤回できるとして、欧州に対して更に60日間の猶予を与えた。

評価

 フランス・イラン間で150億ドル(約1兆6000億円)を限度額とする融資の条件付き開始が検討される中(『中東かわら版』No.88)、イランは交渉の余地を残したものと考えられる。仮にイランがウラン濃縮度の引き上げに着手した場合、欧州の反発は必至であったが、これで、イランと欧州の駆け引きは継続されることになった。

 今後の不安要素は、やはり米国がフランスの提案を容認するか否かであろう。9月4日、米国財務省外国資産管理室(OFAC)は、革命防衛隊ゴドス部隊の支援を受けて、イラン産原油をシリアのアサド政権やレバノンのシーア派軍事政治組織ヒズブッラーに輸送しているとして、船舶ネットワーク・個人(10人)・団体(16団体)に制裁を科した。米国の対イラン政策は引き続き厳しい状況のままであり、フランスの提案を了承しない可能性も排除されない。活路が見いだせない場合、イランは核技術の研究・開発を更に推し進めるものと見られ、さらに国際社会におけるイランの孤立が深まる可能性がある。

 

【参考情報】

*関連情報として、下記レポートもご参照ください。

 <中東かわら版>

・「イラン・米国:JCPOAの履行一部停止を表明」『中東かわら版』No.27

・「イラン:低濃縮ウランが規定貯蔵量を超過」『中東かわら版』No.59

・「イラン:ウラン濃縮の制限超過を発表」『中東かわら版』No.60

・「イラン:第3段階目となるJCPOA履行一部停止を警告」『中東かわら版』No.86

・「イラン:第3段階目となるJCPOA履行一部停止を警告#2」『中東かわら版』No.88

<中東分析レポート>(会員限定)

・「イラン核合意を巡るイランの強硬姿勢 ~国内的要因を中心とした背景と諸相~」(2019年8月)

(研究員 青木 健太)

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