中東かわら版

№87 サウジアラビア:観光査証の発給についての報道

 2019年9月3日、サウジ当局が9月27日に観光査証を発給するとの報道が、関係筋からの話として、概要以下の通り報じられた。

  1. 観光査証が発給される外国人は、指定の50~51カ国の者に限る。
  2. 査証は事前にインターネット、あるいは到着時に空港で取得可能。
  3. 査証の手数料は440リヤル(117米ドル)で、90日間有効。

 なお、サウジ観光遺跡委員会は、上記報道を「不正確」としつつ、査証発給に向けた議論が進行中であると述べた。

 

評価

 かねてよりサウジ政府は、サウジ・ビジョン2030の一環として、インバウンドを中心とした経済効果を見込み、観光産業の促進を掲げてきた。これを背景に、観光査証が発給されるとの報道はこれまで何度も見られたが、実現には至っていない。この背景には、外国文化の過剰な流入が、宗教的価値観に基づいた社会のあり方に影響を及ぼすことへの警戒がある。政府ハイレベルが、内務省等の治安機関の承諾を経て、既定路線として進めない限りは、今後も実現はしないだろう。

 もう一つ、外国人観光客を呼び込む上で問題となるのは、国内の観光インフラである。サウジは5つの世界遺産と豊かな自然を有する国であり、観光要素は決して少なくない。一方、ヨーロッパ諸国をはじめとした観光地と比べると、公共交通機関と観光地案内の未整備、またこれらについての総合的な情報が不足している。加えて、観光査証の発給が噂された際に必ず聞かれるのが、「イスラム教徒ではないがマッカに行って写真を撮りたい」「お酒を持ち込んで砂漠で飲みたい」などの、観光客側のインモラルな希望である。サウジ当局の側に、もてなしと罰則、双方への十分な準備が整わない内に多くの外国人観光客が訪れるようになれば、無用なトラブルにつながるだけであろう。

(研究員 高尾 賢一郎)

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