中東かわら版

№68 サウジアラビア:16年ぶりの米軍駐留

 2019年7月19日、サウジ国営通信をはじめとした国内メディアは、国防省・外務省の発表に基づき、サルマーン国王がサウジにおける米軍駐留を決定したと報じた。本決定は、地域の安定維持に向けた、米国との共同作業の質の向上を目的とするものとされた。

 サウジにおける米軍駐留は、1990~2003年(湾岸戦争~イラク・フセイン政権崩壊)以来、約16年ぶりで、7月中は当面の活動として、北東部のキング・ハーリド軍事都市(東部州ハフル・バーティン市近郊)で共同訓練「熱烈な指導者 2019」(Enthusiastic Leader 2019)を実施する予定である。なお米国側の一部メディアは、戦闘機・防空ミサイル・500人超の部隊をサウジに送る準備が進められており、一部はすでにリヤド州のプリンス・スルターン空軍基地に到着したと報じている。

 

評価

 本決定に先立つ2019年7月9日、米国のダンフォード統合参謀本部議長が、ペルシャ湾のホルムズ海峡と紅海のバーブ・ル・マンダブ海峡の船舶航行の安全確保を趣旨とした有志連合結成を提案した。今後、参加国全体の協議の場が設けられる予定だが(『中東かわら版』No. 64)、サウジは今般の決定により、先立って有志連合への協力姿勢を示した。有志連合案は、ペルシャ湾対岸のイランに加え、紅海沿いのイエメン(フーシー派:正式名称アンサール・アッラー)へのけん制になる点で、サウジにとってメリットが大きいためである。

 一方、サウジにとって米軍駐留はリスクも伴う。最初の米軍駐留の契機となった湾岸戦争時、国内では一部の有識者が米軍駐留に疑義を唱え、これが主体を変えて政府批判、ひいては武装活動へと展開していった。サウジ政府は、今般の米軍駐留が国内にどのような議論や運動を呼ぶか、慎重に観察していると思われる。

 とはいえ、今般の決定が準備もなくなされたわけではないだろう。この一つと思われるのが、2017年9月の「サフワ」関係者数十名の一斉逮捕である。サフワとは湾岸戦争時の米軍駐留に反対し、政府に政治改革要求を行ったグループを指す。今年に入ると逮捕したサフワ関係者の一斉処刑の噂が流れ、さらに逮捕を免れたサフワ関係者がテレビ番組でサフワを批判するなど(『中東かわら版』No. 26)、メディアを賑わす機会が増えている。「米軍駐留」と聞いて思い出される代表的な勢力の掃討がこの数年で進められてきたことは、今般の決定の準備ととれなくもない。

(研究員 高尾 賢一郎)

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