中東かわら版

№44 サウジアラビア:フーシー派によるミサイル攻撃

 サウジ国営通信SPAが、サウジ主導の有志連合で報道官を務めるトルキー・マーリキー大佐による発表に基づいて報じたところによれば、12日2時21分、イエメンのフーシー派(正式名称:アンサール・アッラー)が発射した巡航ミサイルが、サウジ南西部のアスィール州アブハー市にあるアブハー国際空港到着ロビーに着弾し、26名の民間人(イエメン、インド、サウジ国籍の女性3名とサウジ国籍の子供2名を含む)が負傷した。また14日明朝には、5機のドローンがアブハーと隣のハミース・ムシャイト市に向けて発射されたが、国軍がこれを撃墜した。なお民間航空庁(GACA)によれば、同空港は通常通り稼働しており、運航状況にも影響はない。

 なおフーシー派は公式サイトで、アブハー空港へのミサイル着弾が、サウジ主導の連合軍の空爆によって命を落とした女性、子供、老人を含む数千のイエメン人のための復讐であるとの声明を出した。

 

評価

 5月15日のマッカ市へのミサイル発射と、同20日のリヤド州石油パイプライン施設へのドローン攻撃(『中東かわら版』No.32)に見られたように、サウジでは先月からフーシー派による攻撃に関する報道が増えている(フーシー派は15日の攻撃を否定)。これまでフーシー派の攻撃に関する報道は、軍や政府施設を狙った攻撃を防止したという説明が定番だった。しかし、15日の攻撃は民間施設を狙ったもので、20日の攻撃は「世界経済を脅かす」ものである上、防止できなかったと報じられた。こうした報じ方の変化には、フーシー派の非人道性と高い脅威度を国際社会と共有したいとのサウジ側の思惑が見られる。今般のアブハー空港へのミサイル着弾に関する報道については、外国人を含めた一般市民が利用する国際空港が攻撃を受けた上、「女性子供を含む」負傷者がいるとの報じ方から、上記の思惑が強まった様子が見て取れる。

 もちろん、だからといってサウジ側の報道が虚偽、ないしは誇張というわけではなく、公表されたアブハー空港へのミサイル着弾の瞬間の動画は、これが事実であれば死者が出なかったのは偶然に過ぎないと思わせるほどである(画像参照)。ただし、サウジ側が一連の報道で当たり前のように用いる「イランの支援を受けたフーシー派」との表現は、内憂外患の全てを「イラン問題」として発信するサウジ側の認識を前提としており、慎重に受け止めるべきである。さもなければ、13日に起こったオマーン湾での船舶攻撃(※)のような域内のあらゆる騒擾を単純化して捉えてしまうことにつながるだろう。

イスラーム過激派モニター(No.M19-04)「オマーン湾での船舶攻撃事件」(会員限定)

 

 

https://twitter.com/arabnews/status/1139228417843453952

 

参考

「フーシー派って何?」髙岡豊(中東調査会・主席研究員)

https://news.yahoo.co.jp/byline/takaokayutaka/20171207-00078991/?fbclid=IwAR3rbn3BAK_A1WsezBsM7fSx52dmo0gdJLvF9Rh0i4aFhMZhu0hvKuOWzQw

 

(研究員 高尾 賢一郎)

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