中東かわら版

№38 サウジアラビア:イスラーム学者を集めての「マッカ宣言」

 ラマダン月が巡礼期を迎える中、これに合わせて27~30日にマッカで行われたムスリム世界連盟(MWL)主催の会議「寛容にかかわるイスラーム的価値」が閉会した。会議最終日には、「マッカ宣言」にサウジのサルマーン国王を含め、イスラーム学者を中心に1,200人の宗教界の顔役らが署名した。マッカ宣言の概要は以下の通り。

  1. 宗教・文化的多様性を尊重する。対話を通じて争いを避け、歴史的な差異の克服に努める。
  2. テロリズム・不正義・抑圧・イスラモフォビアといった人権を害するものとの戦いは全ての人間にとって義務である。
  3. 宗派主義的な思想を押し付けるなど、他国への干渉行為に反対する。
  4. 女性が尊厳を保ち、社会の様々な部門で活躍できるよう支援する。
  5. 若者に宗教・祖国・文化・歴史・言語に関するアイデンティティと寛容の思想を持たせることで、過激化する事態を防ぐ。

 

評価

 サウジの資金によって設立されたMWLは、同国のイスラーム諸国との外交ツールという性格をおのずと持ち、世界各国から政治・宗教指導者が集まるラマダン月のタイミングでの開催という政治利用も驚くに値しない。しかし、今次の会議はこのマッカ宣言、とりわけ上記3において反イランという意思統一を図ろうとのサウジ政府の意向が強く感じられるものとなった。これを補足するように、並行してジェッダで行われたイスラーム協力機構(OIC)閣僚会合では、イブラーヒーム・アッサーフ外相が「イスラーム世界が直面している最大の問題は他国による内政干渉」であるとした上で、全てのイスラーム諸国に対して「イランによる干渉を拒絶するよう」求めた。30日にはマッカでGCC緊急会合、31日には同じくマッカで第14回OICサミットが予定されている。緊急会合では主催国、OICサミットでは議長国を務めるサウジとしては、これらをイラン包囲網拡充に向けた、一続きの好機とすべく、具体的な協定の締結等を議題に上げる可能性もある。

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