中東かわら版

№33 サウジアラビア:高度外国人材用「グリーン・カード」発行案が可決

 5月13日の閣僚評議会で、外国人用イカーマ(居住許可証)に関する改正案が可決された。これは、高度外国人材(現時点では、高度な技術を持った外国人、資本金を所有する外国人とされる)に対して、従来必須であったサウジ人スポンサーないしは雇用者を必要としない、特別なイカーマ(通称「グリーン・カード」。イカーマのカードが従来緑色であることと、米国の外国人永住権の名称にかけている)を発行するというもの。これは3年前にムハンマド皇太子から、「サウジ・ビジョン2030」の準備の一環として発案され、今後90日以内に詳細が決定される予定である。これを経て、一部外国人はサウジ永住、不動産の所有や資産運用が可能になると期待されている。

 

評価

 国内の報道によれば、一部の外国人労働者は同案を歓迎しているとのことだが、高度外国人材に該当しない労働者、例えば外国人労働者が多く従事する運転手やハウスメイドの間では、「自分には無関係な話」という具合に、関心は高くないようである。こうしたありうべき意見を想定してか、イブラーヒーム・ウマル総合投資院(SAGIA)総裁は、「世界中の革新的な人材に対して、サウジでの生活や労働に魅力を感じてもらうことが目的」であり、これが「国内の民営化部門(全体)の発展につながる」と述べた。ここから分かるように、今回のイカーマ改正案は、国内経済に貢献しうる人材の海外からのリクルートを念頭に置いたもので、国内居住者の3~4分の1を占めるとされる既存の外国人労働者のステータス改善や、彼らに対する人道的配慮といった類のものではない。

 他方、イカーマ発行に際してのスポンサーシップ制度にメスが入った(部分的とはいえ)こと自体は無視できない動きである。というのも、外国人労働者のイカーマ取得に際しては従来、王族等の社会的地位を持つ人物がスポンサーを務め、一部の間では外国人労働者に高額のスポンサー料を払わせたり、給与の上前を撥ねたりといった「イカーマ・ビジネス」が横行していた。ただし現体制には、こうしたエスタブリッシュメントのあり方を是正する面も見られるため(2017年『中東かわら版』No. 116「汚職により王族・現職閣僚ら数十人を拘束」)、今回の改正案がイカーマ・ビジネスへのけん制につながり、ひいては外国人の就労環境の改善に関心が集まる可能性もある。

(研究員 高尾 賢一郎)

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