№31 UAE:フジャイラ沖で商船・タンカーに「破壊行為」#2
- 2019イランサウジアラビアアラブ首長国連邦湾岸・アラビア半島地域
- 公開日:2019/05/14
5月12日に起こったUAEフジャイラ沖でのUAE・サウジの民間商船4隻への「破壊行為」に関して、両国から商船についての情報が公開されたところ、概要は以下の通り。
1.Andrea Victory Bergen:ノルウェー、石油製品給油船。
2. A. Michel:UAE、バンカー重油荷船。
3. Amjad:サウジ(Bahri社)、VLCC(超大型油タンカー)
4. Al Marzoqah:サウジ(Bahri社)、原油タンカー
なお、UAE国営『WAM』通信によると、フジャイラ港は問題なく稼働しているとのこと。
評価
現時点で「破壊行為」の詳細や主体は依然不明であり、当事国も「まだ物的証拠はない」と述べるにとどまっている。一方、UAEとサウジには本件をイランによるものと印象づけたい思惑が見て取れる。例えばUAEの『バヤーン』紙、サウジの『アラブ・ニューズ』紙は、「破壊行為の主体」としてイランを名指しこそしないものの、当該記事の半分近い紙幅をイランの近況に関する説明(経済制裁等による苦境)に割き、これを臭わせている。UAEが本件の被害調査を米国に依頼したとの報道もあり、米国を巻き込んでさらにイランを孤立化させる考えであろう。とはいえ、特にイランへの対応に際して見られるUAE・サウジ・米国とのパートナーシップは、ともすればUAE・サウジの安全保障分野における「米国頼み」の現実を露呈することになる。こうした状況が続けば、UAEとサウジはむしろ域内でのプレゼンスやリーダーシップを低下させる可能性もある。
(研究員 高尾 賢一郎)
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