中東かわら版

№25 オマーン:「オマーン・ビジョン2040」の進捗

各種報道機関は、第1四半期決算期を終え、オマーンの経済回復と今後の展望について要旨以下の通り報じた。

 

1 商業地区の開発

4月15日、マスカット郊外のスィーブ特別行政区で、大型ショッピング・モール「マスカット・モール」(Mall of Muscat、Al Jarwani GroupとTamani Global for Development & Investmentの共同経営)が開業した。オープニング・セレモニーはハイサム・ビン・ターリク遺産・文化相の後援で執り行われた。モールには、欧米のハイブランド及びファストファッション店舗、フードコート、家電量販店の他、4DXアトラクションを導入したカタルのノヴォ・シネマ(Novo Cinema)や、インド系ハイパーマーケット「ルル」(LuLu)の国内最大店舗、さらに日本の「無印良品」(※)が参入している。中でも話題を集めているのは、中東最大と言われる8平方㎞のオマーン水族館(Oman Aquarium)で、今後はスノーパークの開業も予定されている。なおこうした商業施設の開発を背景に、2017~18年に一部の地域で23%程度下落した地価が、2019年に入り2~4%回復した。(4月25日付Oman Observer他)

※中東の「無印良品」は6店舗目。他の5店舗はオマーンを除くGCC加盟5カ国。

 

2 航空業界の躍進

4月にオマーン航空グループ(2018年2月設立。オマーン航空、オマーン空港連合、オマーン航空サービス等からなる)は、今後の戦略を新しいグループ・ロゴとともに発表した。アフマド・ビン・ムハンマド会長(運輸・通信相との兼任)は、同グループの発展が観光・物流分野を中心にオマーン経済に資するよう、オマーンの各空港が地域のハブ空港になることを目指すと述べた。なおマスカット国際空港の2019年3月の利用者数は前年同時期より8.7%増加した。(4月27日付Time of Oman他)

 

評価

 1995年に経済計画「オマーン・ビジョン2020」が開始して以降、同スキームに則ってオマーンは脱石油依存と産業多角化を目指してきた。しかしGDPの推移が油価の下落・回復に連動している現状に鑑み、これらの目標は未だ達成されていないと判断できる。後継スキームとして2017年に開始した「オマーン・ビジョン2040」では、上記目標を段階的に達成すべく、観光産業の振興による投資・消費の増加など、より具体的な課題に取り組んでいる。

 上記1〜2の報道内容は、自国民の消費に加え、国外からの旅行者によるインバウンド消費につながるものとして、「ビジョン2040」の現時点での一定の進捗と見ることができる。前述の通り、国内の経済状況は依然として脱石油依存に向けて順調とは言えないものの、観光シーズンである下半期に向けて、クルーズ船観光が前年に比べて好調と報じられるていることも明るい話題である。航空業界に関しては、2017年6月にサウジアラビア・UAE・バハレーンの周辺アラブ諸国がカタルとの国交を断絶したことを機に、オマーンはドーハへの就航便を増やしており、オマーンの特徴である全方位外交を経済面への利益につなげている。

また、こうした非石油部門の活性化を進める上で、政府は労働者の自国民化を通した失業率対策に取り組んでいる。67%が30歳以下という若齢化社会を背景に、若年層の高失業率が深刻化している状況を受けて、労働者の自国民化も「ビジョン2040」が取り組むべき課題とされてきた。これについては、4月21日の諮問評議会でハーリド・ビン・ウマル公務員相から、官公庁管轄機関での自国民化が87.5%に達したと報告がある等、進展が見られる。

 なお、「ビジョン2040」には企業文化やウェル・ビーイング(心身両面の健康)に対する意識向上、国民アイデンティティとしての「寛容なイスラーム」の普及も含まれており、これらが今後どのように進められていくかも引き続き注目される。

(研究員 高尾 賢一郎)

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