中東かわら版

№15 イエメン:スーダンの移行軍事評議会が派兵継続を表明

 2019年4月15日、スーダンの移行軍事評議会がイエメン紛争に介入するサウジが率いる連合軍への参加継続を表明した。同評議会のダクルー副議長(大将)は、「我々は連合軍に対する責務を固守し、連合軍が目標を達成するまでとどまる」と表明した。同評議会は、バシール大統領失脚後のスーダンの権力を掌握し、スーダン情勢の収拾を試みているが、同国では早期の民政移管を求めるなどして抗議行動が続いている。

 なお、スーダンはバシール政権時代の2015年3月に始まったサウジが率いる連合軍によるイエメン介入に参加している。『ミリタリー・バランス』(2018)によると、スーダンはイエメンに戦車旅団など950人の人員を派遣している。

 

評価

 イエメン紛争は、紛争打開は無論のこと、包括的な停戦に向けた諸当事者の協議も展望も開けないまま人道危機だけが深刻化している。2018年には重要な港湾都市であるフダイダについて一応の停戦合意が成立したが、その履行は常に危うい状態であるし、紛争当事者間の本格的な和平協議にもつながっていない。

 そうした中、上記の「連合軍の目標」についても、それが何なのか、現実的に達成可能なのかがおぼつかない状況に陥っている。サウジが率いる連合軍に参加する諸国にとっても、展望が開けないまま負担がかさむ事態が生じつつあり、スーダン軍についても、2018年10月26日付『ガーディアン』(イギリス紙)は戦死者1000人という推計を報じている。これはスーダンの人民にとっても重い負担のようにも見えるが、この問題はバシール政権や移行軍事評議会に対する抗議行動で主要な争点にはなっていない模様である。また、連合軍に参加することは、スーダンにとってはサウジやUAEをはじめとする、イエメンへの介入を主導する諸国からの経済的な見返りが期待できる活動であろう。とりわけ、バシール大統領失脚後の事態収拾のため国際的な承認と支持を必要とする移行軍事評議会としては、サウジなどからの承認と経済的な支援がぜひとも欲しいところだろう。一方、イエメンへの派兵がスーダンでの抗議行動の主要な争点となり、これが打ち切られるような事態に発展する場合は、サウジが率いる連合軍は最も人的被害が生じやすい任務を任せる参加国を喪失することになるため、イエメン紛争の展開にも影響を与える可能性が高い。

(主席研究員 髙岡 豊)

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