中東かわら版

№6 カタル:自国をめぐる報道への反論

3月31日のアラブ連盟首脳会議(於チュニス)でのタミーム・カタル首長の途中退席を、とりわけサウジアラビアのメデイアが取り上げている(2019年『中東かわら版』No.2を参照)。これを受けて、カタルの親政府メディアである『シャルク』紙が4月1日付で以下概要の通り、反論ととれる記事を掲載した。

 

*アラブ連盟首脳会議では、ゴラン高原の領有権問題、パレスチナ問題、イエメン紛争などについて協議されたが、メデイアはこれらの議題よりも、タミーム首長が会議を途中退席したことへの様々な疑問で賑わっている。報じるべきは会議でどれほどの成果を残せたかである。

 

*とりわけサウジ・UAEのメディアの本件に関する報道は虚偽や憶測を含んでおり、これらは会議の詳細や核心について触れる代わりに、枝葉末節な議論を展開している。多くのメディアはこの論調に追従しているが、例えばモザイクFM(チュニジアのラジオ局)が報じたように、タミーム首長の途中退席は会議のホスト国であるチュニジア側と事前に打ち合わせ済みであり、タミーム首長はその後に会議主催国への感謝の意も伝えている。

 

*現在の「湾岸危機」問題の原因は今回、チュニジアでタミーム首長が退席したことで初めて起こったわけではない。(この原因である)ドーハを封鎖している最たる国(サウジアラビア)のサルマーン国王はこの問題について演説等で言及しなかった。

※( )内は文責者による。

 

評価

カタル側が主張するように、サウジ・UAEのメディアはタミーム首長の同会議の途中退席を、トルコ・イランが他国に干渉しているとの批判からの「逃亡」として、カタルが孤立しているムードを醸成している面がある。

これに対して『シャルク』紙は、タミーム首長の途中退席が主催国側との合意事項であるとして、これを過度に報じるサウジ・UAEのメディアを批判した。さらにこうした域内諸国の対立・緊張関係を生んだそもそもの原因としてサウジアラビアのサルマーン国王を名指している。

 ただし、サウジ・UAE・カタルのいずれも、これに関する公式な意見表明は出していない。タミーム首長の途中退席はハイレベル間では重要な問題と認識されていないと思われ、むしろ現在の「湾岸危機」をこれ以上悪化させないためのウィン=ウィンなものであったと見ることもできる。したがって、(とりわけサウジアラビアのメディアで)頻繁に報じられているものの、本件がカタル・サウジ関係に大きな影響を及ぼす可能性は低いと思われる。

(研究員 高尾 賢一郎)

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