中東かわら版

№5 シリア:砂漠トリュフが異例の豊作

 2019年3月29日付シリア・アラブ通信(SANA)は、ダマスカス郊外のカラムーン地域で砂漠トリュフが異例の豊作であるとして要旨以下の通り報じた。

  •  カラムーン地域でトリュフが豊作で、地域の住民たちにとってトリュフ探しはピクニックと売却益という二つの楽しみを享受している。
  •  トリュフは「稲妻の娘」と呼ばれており、紛争勃発前は地域の住民がトリュフを探して砂漠に出かけることが恒例となっていた。
  • 地域の高齢者は今期のような豊作も、今期のような潤沢な降水量も経験がないと述べた。トリュフ探しには技術と労力が必要なため、地域の住民は家族や友人と連れ立ってトリュフ狩りに出かける。
  •  東カラムーン地域のジャイルード市の市場では、異例の豊作のためトリュフが値下がりしている。上質なトリュフ1kgは、6000シリア・ポンド(SP。1ドルは430~550SP程度)から3000SPに値下がりした。小型のトリュフは1kg2000SP程度で購入できる。
  •  調理法としては茹でる、揚げるが一般的で、地域の住民はヨーグルトやコメ入りのスープや、クッベ(コロッケの一種)の具にするなどして楽しんでいる。

 

評価

 砂漠のトリュフは、シリアの土漠・砂漠で雷雨の後に生える冬の代表的な食材の一つである。今般の記事で取り上げられた地域は、2018年中ごろまで「反体制派」武装勢力が占拠していた地域であり、住民たちがトリュフ狩りを楽しむことができるようになったことは、この地域で戦闘が収束した結果である。

 シリアでは乾燥地域でも年間150mm程度の降水があるが、近年は干ばつが深刻化しており、干ばつ被害とそれに対する政府の対応が遅れたことは、シリア紛争の原因の一つと考えられている。そうした中、今期はシリアの農業省の観測によると平年の倍以上の降水に恵まれた観測地点があり、洪水被害も生じているなど、全国的に降水量が多かった。砂漠トリュフの豊作は、紛争の収束と潤沢な降水という、シリアにとって明るいできごとを反映している。

(主席研究員 髙岡 豊)

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