中東かわら版

№4 トルコ:統一地方選挙の実施

 3月31日、トルコ全土で統一地方選挙が実施された。即日開票の結果、主要3都市アンカラ、イスタンブル、イズミル全てで与党・公正発展党(AKP)候補者が破れた。特に最大都市イスタンブルでは、過去に例がないほどの大接戦となりAKP、最大野党の共和人民党(CHP)双方が勝利宣言を行うなど最後までもつれた。また、アンカラは2001年のAKP結党以来初めて市長の座を明け渡す結果となった。

 

投票者総数

57,093,410

投票者数

48,339,262

有効投票者数

46,430,721

得票率

84.67%

(出典:『アナトリア通信』2019年4月2日閲覧)

 

評価

 今般の選挙の注目点は、国政にも影響力を持つ主要3都市のうち、AKP結党以来、守り続けてきた首都のアンカラと最大都市イスタンブルでAKP候補者が市長の座を維持できるか、ということであった。イズミルは伝統的に世俗主義政党のCHP支持者が多く、AKPが勝つのは困難な地域のため、AKPへの関心は2大都市に集約されたといえる。

 2018年8月のトルコリラ大幅下落以降、不安定な状態が続くトルコ国内では、インフレや物価高が進行しつつあり、国民生活にも影響を及ぼしている。今回の選挙はそうした状況下で国民がエルドアン政権に対しどのような評価をするのか、という信任を問う意味合いがあった。

 国内経済低迷の中、AKPは当初から苦戦を強いられるとの予想もあり、エルドアン大統領は、2018年12月末、イスタンブル市長候補者に、首相経験者で国会議長(当時)のユルドゥルム氏を据えた。また、アンカラ市長候補者にも、現職大臣のオズハセキ氏を擁立するという万全の態勢で臨んだが敗退した。

 国政選挙ではないため、今般の結果が内政に直接影響するわけではないが、接戦とはいえ主要都市すべてで国民からの負託を得られなかったことで、エルドアン大統領の求心力低下は避けられないだろう。

 また、選挙戦直前の3月下旬からリラが下落している。エルドアン大統領は故意の為替操作が行われていると発言し反発を強めているが、10月に外国金融からの債務の返済期限が迫っていることから、早急な対応が求められる。

(研究員 金子 真夕)

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