中東かわら版

№3 イラン:米国がイランへの追加制裁を検討

 『ロイター通信』(4月1日付)は、米国のトランプ政権が、イランに対する追加制裁を検討していると報じた。政府筋によれば、昨年のイラン核合意(JCPOA)からの離脱1周年を目途に制裁の追加が検討されており、5月に発表される見込みである。米国による対イラン制裁の効果を持続させることと、イランとの取引を継続する企業に対する牽制の意味合いが強いとされる。

 

評価

 今般の追加制裁の検討は、トランプ政権の焦りによるものなのではないかと考えられる。同政権は、ワルシャワで開催された「反イラン集会」(2月13日、14日)で思ったような成果を得られず、「対イラン包囲網」を強化することができなかった。加えて、3月21日に新年を迎えたイランは、今年度を「生産活性化の年」と位置付けて、あらゆる分野における自給自足を行い、現状を耐え抜く姿勢を示している。元々、イランは対イラン12か条の揺さぶりなどの度重なる挑発にも乗らず、トランプ政権の交代まで現状維持を図る方針である。こうした事態を動かすために、追加制裁が検討されているのではないかと考えられる。

 トランプ政権は、昨年8月7日11月5日の2段階に分けて対イラン制裁を再開した。また、現在に至るまでに何度も制裁対象を拡大し、特定指定国民(SDN)リストを更新してきた(例えば『中東かわら版』2018年No.71)。最新の更新は3月26日に行われ、9個人16団体が追加されている。JCPOA離脱1周年記念の制裁ともなれば、制裁対象分野の拡大など、これまで以上の動きが見込まれるだろう。だが、現在適用されているイラン制裁は、既に広範な分野にわたっており、これ以上の拡大は、人道にかかわる物資などの分野に抵触する恐れがある。また、イランビジネスを継続する企業が標的とされることから、今後、ファーウェイ事件のような事態が、米国と関係各国の間に生じる可能性もある。

 追加制裁が予定されている5月上旬は、日本を含む8カ国に与えられていた180日間のイラン産原油輸入に対する制裁免除措置が期限を迎えるのと同時期となる。免除期間の延長を求めた日米協議も先行きが不透明であり、石油元売り各社は、今月の船積みから再停止を検討する必要に迫られている。現時点で既に大きな影響を及ぼしている対イラン制裁であるが、これ以上となると、国際社会への影響も更に大きなものとなるだろう。

(研究員 近藤 百世)

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