中東かわら版

№111 イラン:保守強硬派ライースィー師の司法長官任命

 3月7日、最高指導者のハーメネイー師が、6代目司法長官にセイエド・エブラーヒーム・ライースィー(ライシ)師を任命した(任期5年)。同師はイスラーム革命以降、司法関係職を歴任した保守強硬派の人物で、2017年に大統領選に出馬して以来、知名度を高めてきた(詳細は『中東かわら版』2017年No.32を参照)。同師は、最高指導者の後継者候補の一人と目されている。

 

評価

 ライースィー師の司法長官任命は、保守穏健派が占めるロウハーニー政権と保守強硬派の対立が今後も継続されることを示している。司法府は保守強硬派が優勢で、2017年の大統領選挙以降、現政権との対立が先鋭化してきたことが度々指摘されてきた。

 ライースィー師は、2017年の大統領選の際、同じく保守強硬派で大衆に人気のあるガーリーバーフ元テヘラン市長が出馬を辞退して同師の支持に回ったことがきっかけで、一般にも知られるようになった。最高指導者ハーメネイー師の覚えもめでたく、検事総長などの司法要職を歴任した他、2016年からはマシュハドのエマーム・レザー廟寄進財団の管財人(実質的な最高責任者)になっている。

 イスラーム革命40周年を迎え、イランの中では、革命の継承が大きな課題となっている。先般のライースィー師の大統領選への出馬は、こうした動きを牽引する次世代の保守強硬派が台頭してきたものと受け止められた。今般の司法長官任命は、次代の保守強硬派の有力者であり、最高指導者候補でもある同師が、本格的な活動を開始する契機になると捉えられよう。同じく最高指導者候補の一人とされてきたロウハーニー大統領は、イラン核合意(JCPOA)を巡る問題で、ハーメネイー師から敬遠されているものと考えられる。この機に保守強硬派が優勢になることは、ある程度仕方のない事態であろう。

 米国によるイラン核合意(JCPOA)離脱以来、ロウハーニー政権は保守強硬派の糾弾に曝されてきた。先日のザリーフ外相の辞任騒動も、こうした流れの中で生じている。今後もその傾向が継続することは間違いないが、現政権は、現在においても国際協調路線を崩していない。国際社会との調整を行いつつ、どこまでこれらの保守強硬派の台頭を抑えられるか、あるいはこれらと協調していかれるかが、イランの今後にとり重要となってくるだろう。

(研究員 近藤 百世)

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