中東かわら版

№98 イラン:EUが新たなイラン制裁で合意

 8日、欧州連合(EU)がイランに対して制裁を科すことで合意した。そして、9日付で制裁対象リストが更新され、情報省国内治安局とイラン人2名(情報省のセイエド・ハーシェミー・モガッダム副大臣兼総合情報局長官と在墺大使館職員のアサドッラー・アサディー氏)について、EU域内の資産が凍結される旨が公表された。域内において、イランの情報機関による反体制派暗殺計画があったことが理由とされている。EUがイランに制裁を科すのは、2015年のイラン核合意(JCPOA)成立以降初めてとなる。

 

評価

 今般の事態により懸念されるのは、JCPOA存続に向けた動きの更なる停滞である。米国の離脱と制裁再開によってJCPOAの存続が危ぶまれ、EUが中心となってその鍵となるイラン経済の破綻を回避する方法が模索されてきた。そして、昨年9月に米ドルを介さない貿易決済システムの構築と中核となる特別目的事業体(SPV)の設立が発表されたが、域内の調整が難航し、現時点まで設立・稼働に至っていない。

 こうした停滞の原因は、二次制裁や対米ビジネスへの影響を懸念していることにある。しかし、これに加えて、デンマークとフランスが牽引する「テロとの戦い」を理由としたイラン制裁を主張する動きが、イラン救済策に対する各国の温度差を拡大させてきたことも影響していると考えられる。この温度差は、暫く続くものとみられるため、SPVに係る協議にも少なからず影響を与えることになるだろう。

 EU側は「テロとの戦い」とJCPOAの存続は別物であるとしているが、イラン側がこれをどう受け止めるかは別の話である。それは、イランが関与を否定し続けているテロや暗殺の計画を理由に制裁が科されたからだ。今般の決定は、8日同日に6カ国(英、仏、独、オランダ、デンマーク、ベルギー)の外交官により通達されたが、イラン側はこれに強い遺憾の意を表明している(9日付、メフル通信)。また、ザリーフ外相や外務省のガーセミー報道官らは、今次の制裁は、反体制武装組織のモジャーヘディーネ・ハルグ(MEK/MKO)やアフワーズでのテロ事件を起こした(とされる)アル・アフワーズィーヤを擁護することと同義であり、「テロとの戦い」に矛盾するとEUを非難している(今般の制裁対象になったのが、この2組織に対して集会へのテロやメンバーの暗殺を計画したとされる組織・人物であったことから)。

 イランはSPVの設立に望みを繋いできたことから、プロセスの遅延に苛立っており、EUへ圧力をかけている最中であった。このタイミングでの制裁は、イランをより厳しい立場に追いやることは確かである。イランにとって、欧州との関係を悪化させることは得策ではない。そのため急激な方向転換は避けるとは思われるが、イランの態度は硬化することになるだろう。

(研究員 近藤 百世)

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