中東かわら版

№96 サウジアラビア:諜報機関再編案を発表

 12月20日、サウジアラビアの諜報機関再編委員会は、同国の諜報活動を改善するための緊急措置4項目を発表した。再編委員会は、ジャーナリストのジャマール・カショギ氏の殺害事件を受けてサルマーン国王が諜報機関の再編を命じて結成されたもので、委員長はムハンマド・ビン・サルマーン皇太子(以下MbS)が務める。4項目は以下のとおり。

1. 戦略開発総合局を設置する。諜報活動を総合諜報庁長官および国家安全保障の戦略と整合性のとれるものとするためである。同局は総合諜報庁長官直属とする。

2. 法律問題総合局を設置する。法律、国際条約、人権の観点から諜報活動を評価するためである。同局は総合諜報庁長官直属とする。

3. 業績評価・内部調査総合局を設置する。諜報活動を評価し、諜報活動の手続きをチェックするためである。この調査報告は総合諜報庁長官に提出される。

4.諜報活動委員会を活性化する。同委員会は、諜報活動の予備評価と諜報活動にとって適切な能力を選定することを目的とする。

 

評価

 サウジアラビア政府は、カショギ氏殺害は一部の諜報機関幹部が自らの判断でおこなった行為であるとみなし、諜報機関幹部を逮捕・起訴し、MbSの関与を否定してきた。今回の諜報機関再編案は、こうした政府の立場にもとづき、諜報活動が政府および諜報庁長官の戦略や命令と外れたところで行われることを防ぐ方針を明らかにした。カショギ氏事件によって、欧米諸国の政府はサウジにおける表現・報道の自由に対する制限を非難し、多くの外国企業がサウジへの投資を再考することとなった。事件はサウジの国際的評判に大きな傷をつけたことは否めず、特にインフラ部門・娯楽産業への諸外国からの投資によって脱石油経済を目指す発展戦略は大きな修正を迫られている。したがって、諜報機関再編案は対外的にサウジの国際的信用を取り戻す意図も含まれていると考えられる。再編案の発表によって、サウジに対する国際的批判を鎮め、事件へのMbS関与をめぐる報道に幕引きを図りたいのだろう。

(研究員 金谷 美紗)

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