中東かわら版

№78 イラン:新閣僚の任命と経済パネルの編成

 10月27日、ロウハーニー大統領が提出した新閣僚案が国会において承認された。そして翌28日、憲法第87条及び第133条に基づき、下記の4名が新閣僚に任命される手筈が整えられた。

 

   *出所:ハムシャフリー紙

 また、31日には、ロウハーニー大統領により、政府の経済政策に専門家を参加させるためのパネルが編成された。パネルは、イラン中央銀行ヘンマティ総裁、企画・予算機関のノウバフト長官の他、新閣僚のデジュパサンド経済・財務相、シャリーアトマダーリー協同組合・労働・福祉相が加わり、計4名となった。

 

評価

 今般の閣僚人事は、11月5日に米国による制裁再開を控えて、空席となっていたポストを埋めた形だ。特に経済政策の実施によって制裁に対抗しうるような、実務能力が高いとされる4名を閣僚に据えている。

 ロウハーニー政権は、経済状況の悪化に伴って国内の保守強硬派からの批判にさらされており、国会では度々閣僚の罷免が取沙汰されてきた。そして、8月8日にラビーイー協同組合・労働・福祉相が、8月26日にカルバースィヤーン経済・財務相が罷免され、政権の弱体化が懸念されるような事態となった。今般の人事が確定するまで、それぞれの職務は省内の幹部職員が代行していた(協同組合・労働・福祉相代理:アヌーシールヴァーン・モフセニー・バンドペイ、8月11日より、経済・財務相代理:セイエド・ラフマトッラー・アクラミー)。また、10月20日にはアーホンディー道路・都市開発相とシャリーアトマダーリー工業・鉱業貿易相がそれぞれ辞任していた。ただし、シャリーアトマダーリー新協同組合・労働・福祉相に関しては、今次の転任を想定した辞任であったと考えられる。

 今般の人事は、経済政策のためのパネルに新閣僚が2名加わっていることからも明らかなように、ロウハーニー政権にとって、制裁を乗り越えるための重要な対策となっている。中でも注目されているのは、テクノクラートとして知られるデジュパサンド新経済・財務相の手腕だ。今年7月末に指名されたばかりの中央銀行のヘンマティ総裁と共に、制裁下の金融政策、主に米ドルを介さない取引体制の設立への貢献を期待されている。

 11月5日に再開する制裁では、イラン経済の要ともいえる原油取引や銀行との取引なども対象となる。現在、イラン核合意(JCPOA)当事国間で約束された特別目的事業体(SPV)の設立や、ロシアとの現地通貨による取引システムの構築など、様々な対策が講じられている。どの段階でこれらが稼働するのか、どの程度の効果があるのか、現時点では不明な点も多い。だが、ある程度軌道に乗れば、イランは活路を見出せることとなるだろう。

(研究員 近藤 百世)

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