中東かわら版

№65 バハレーン:投資誘致のための法整備

 2018年10月4日付『ハヤート』紙(サウジ資本の汎アラブ紙)は、バハレーンが投資の誘致を図って法整備を進めているとして、要旨以下の通り報じた。

 最近、競争促進・保護法、会社再生・破産整理法、個人証書保護法、健康保険法が発行した。競争促進・保護法は、技術革新と生産性の向上を支援するためのもので、独占や競争に反する行為を禁じる。これにより、新規企業を円滑化する。会社再生・破産整理法は、経営難の企業が破産手続きに入ったのちも経済活動を継続し、営業を続けながら再建を図ることを可能とする。これは、市場の信頼強化を通じて経済の安定を図る。個人証書保護法は、証書保護についてのヨーロッパの動向に合わせて整備されたもので、デジタル経済の発展に資するものである。健康保険法は、安定財源に基づく保険制度を整備するもので、健康増進・保健分野での投資誘致に役立つ。

 

評価

 アラビア半島の産油国は、石油に代わる新たな経済基盤を育成するために、経済・社会改革や新たな開発事業の計画を続々と策定しており、バハレーンもその例外ではない。特に、バハレーンは近隣の産油国に比べて資源にゆとりが乏しいため、経済開発のための環境整備が急がれる。また、10月4日にクウェイト、UAE、サウジから財政再建のための100億ドル規模の財政援助の枠組み合意を締結しており、財政面にも不安がある。こうした状況を脱するため、投資誘致のために法整備が進められているが、近隣の産油国でも同様の法整備や投資誘致策が講じられつつあるため、類似のモデルに沿って経済開発を進めようとする諸国の間で、海外からの投資や人材誘致のための競争が激化することも予想される。

 また、バハレーンはGCC諸国のうち2011年の「アラブの春」の影響を最も強く受けた国であり、投資や人材の誘致のためには、国内の政治的な不満の解消・和解を進めることも必要となるだろう。アラビア半島の産油国の間で競争が促進されることにより、企業活動や投資のための環境が向上することが期待できる反面、各国がそれぞれ抱える政治・社会問題にどのように取り組むのかも、投資誘致策の成否に影響を与えるだろう。

(主席研究員 髙岡 豊)

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