中東かわら版

№52 アズハル、セクハラを断罪する声明を発表

 エジプトの著名な宗教機関であるアズハルは、エジプト社会で横行するセクハラについて、これを断罪する声明を発表した。この声明は、最近エジプトで被害者を守ろうとした者が暴行被害にあう事件が発生したことを受けたもので、アズアルは以下の見解を示した。 

  • ほのめかしでも、言葉の上でも、行為でも、セクハラは禁止された振る舞いであり、不正な行為だ。シャリーア上、セクハラをした者は罪に問われる。また、あらゆる法規もセクハラを罪とみなしている。
  • セクハラとその行為者は、文脈を問わず罪に問われるべきだ。女性の服装を理由にセクハラを正当化するのは、間違った理解だ。セクハラは女性の特性、自由、尊厳に対する侵害であり、このような行為が横行することは、安心感の喪失や聖なるものの侵害を招く。
  • セクハラを罰する諸法規を強化し、関係機関は社会の意識向上と、子供へのセクハラがもたらす道徳に対する破壊的影響を防止するよう呼びかける。また、セクハラが発生した際にどのように振舞うべきか、国民を啓発する事業を活性化させるよう呼びかける。報道機関に対しては、セクハラを誘発するような素材を放送しないよう呼びかける。

 

評価

 アズハルが声明の中で女性にとって安全な環境は、預言者ムハンマドが欲した望ましい環境の指標であると訴えているように、イスラームやムスリムはセクハラのみならず異性間の関係に対しても厳格であるとのイメージが持たれるかもしれない。しかし、実際には世界的に著名なアズハルがこのような初歩的な倫理について言及せざるを得ないほど、アラブ諸国やムスリムの間でセクハラ被害が横行している実情も考慮すべきであろう。また、ドイツでムスリムの移民とみられる者による多数の痴漢行為が発生し、移民・難民の受け入れに関する論争を刺激したことも記憶に新しい。

 日本社会、日本人もアラブやムスリムと接触する機会が増えているが、規範的なイメージについて知るだけにとどまらず、アラブ・ムスリムにとっての身近な社会問題や、そこから生じる被害を回避する方策についても学ぶ必要があろう。

(主席研究員 髙岡 豊)

◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/

| |


PAGE
TOP