中東かわら版

№51 サウジアラビア:アラムコ社の新規株式公開中止か?

 2018年8月22日付ロイターは、高位の産業筋の話を基にサウジがアラムコ社の新規株式公開(IPO)を取りやめたとの特ダネを報じた。報道の要旨は以下の通り。

  •  サウジは国内・海外向けのアラムコ社の株式公開を取りやめた。サウジ政府の関心は「サウジ基礎産業社(SABIK)」の株式を「戦略的割合で」取得することへと移っており、アラムコ社の株式公開のための金融顧問らは解雇された。
  • 消息筋は、株式公開取りやめは以前に決定されていたが、それについて公表することができず、(株式公開の)延期、そして取りやめと徐々に情報を流していたと述べた。
  • アラムコ社は6月末まで株式公開に備える金融顧問団のための予算を組んでいたが、消息筋によるとこの予算は更新されておらず、顧問団の活動停止が決められた。

 

評価

 アラムコ社の株式公開は、2016年にムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が中心となって策定された経済開発計画の目玉の一つであった。ただし、経済開発計画そのものは策定当初から実現性が不安視されていた部分もあり、アラムコ社の株式公開取りやめが事実ならばそうした不安が現実のものとなる兆しといえよう。世界的な注目を集めているサウジの経済・社会改革は、その方針が打ち出されて2年を過ぎた現在、諸般の計画や事業をいかに実現させていくのかを問われる局面に入っている。

 ただし、今般の報道はロイターの特ダネであり、他の報道機関の報道やサウジの公式な発表などによって検証や裏付けができるものではない。また、サウジの公的機関は現在犠牲祭休暇中であり、公式な発表や反論があるとしても休暇明けとなることも考えられる。

(主席研究員 髙岡 豊)

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