№32 エジプト:マドブーリー内閣の成立
6月14日、シーシー大統領は、ムスタファー・マドブーリーを首班とする新内閣を任命した。マドブーリーは、前イスマーイール内閣で住宅・公共施設・都市相を務めていた。マドブーリー内閣は全32閣僚から成り、うち12名が新任となった。
なお、イスマーイール前首相は国家戦略プロジェクト担当大統領補佐官に、スブヒー前国防相は国防担当大統領補佐官に、アブドゥルガッファール前内相は治安・テロ対策担当大統領顧問に任命された。
※新任は太文字
首相 兼 住宅・公共施設・都市相 |
ムスタファー・マドブーリー |
前住宅・公共施設・都市相 |
国防相 兼 軍需産業相 |
ムハンマド・ザキー |
前共和国防衛隊司令官;中将 |
ワクフ相 |
ムハンマド・ムフタール・グムア |
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電気・再生可能エネルギー相 |
ムハンマド・シャーキル |
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社会連帯相 |
ガーダ・ワーリー |
女性 |
外相 |
サーミフ・シュクリー |
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軍需産業担当国務相 |
ムハンマド・アッサール |
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投資・国際協力相 |
サハル・ナスル |
女性 |
石油・鉱物資源相 |
ターリク・ムッラー |
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移民・在外エジプト人問題担当国務相 |
ナビーラ・マクラム |
女性 |
法相 |
ムハンマド・アブドゥルラヒーム |
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水資源・灌漑相 |
ムハンマド・アブドゥルアーティー |
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考古学相 |
ハーリド・アナーニー |
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労働力相 |
ムハンマド・サアファーン |
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供給・国内貿易相 |
アリー・メセルヒー |
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議会相 |
ウマル・マルワーン |
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教育・技術訓練相 |
ターリク・シャウキー |
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高等教育・科学研究相 |
ハーリド・アブドゥルガッファール |
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計画・フォローアップ・行政改革相 |
ハーラ・ヒルミー・サイード |
女性 |
運輸相 |
ヒシャーム・アラファート |
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文化相 |
イーナース・アブドゥルダーイム |
女性 |
観光相 |
ラニヤ・マシャート |
女性 |
財務相 |
ムハンマド・マイート |
前財務副大臣 |
民間航空相 |
ユーニス・ミスリー |
前空軍司令官 |
地方開発相 |
マフムード・シャアラーウィー |
元国家治安局長官 |
内相 |
マフムード・タウフィーク |
前国家治安局長官 |
保健・人口相 |
ハーラ・ザーイド |
小児がん病院CEO;女性 |
環境相 |
ヤースミーン・フアード |
元環境相補佐 |
農業・土地開拓相 |
イッズッディーン・アブーセティート |
元カイロ大学副学長 |
通信・情報技術相 |
アムル・サミーフ・タラアト |
IBM Egypt社GM |
青年・スポーツ相 |
アシュラフ・スブヒー |
元青年・スポーツ相補佐 |
貿易・産業相 |
アムル・ナッサール |
エジプト・エンジニアリング輸出委員会 |
公共部門相 |
ヒシャーム・タウフィーク |
公共部門省傘下の建設部門持ち株会社の理事 |
評価
今次内閣改造は、シーシー大統領の再選にともなう内閣改造である。首相に任命されたムスタファー・マドブーリーは、イスマーイール前首相が2017年末にドイツで治療を受けていた期間に暫定首相に任命されていた。この点からマドブーリーはシーシー大統領の信頼を得ていたと思われる。
重要な閣僚変更としては、国防相と内相で新たな人事が決定されたことを指摘できる。2011年以降の閣僚人事の特徴として、1つのポストを同一人物が長期間担当しなくなったことが挙げられるが、国防相と内相の変更はこれに相当すると考えられる。国防相に関しては、前任のシドキー・スブヒーはシーシーが大統領に就任した2014年6月から同職を務めたが、共和国防衛隊司令官であったムハンマド・ザキーが新たに国防相となった。共和国防衛隊は軍組織の中でも大統領に近いと言われており、大統領の信頼を得た人物としてザキーが選ばれたのだろう。内相に関しては、2015年から内相を務めたマグディー・アブドゥルガッファールが更迭され、国家治安局長官のマフムード・タウフィークが任命された。国家治安局長官から内相に任命されるルートは通常である。治安関連のポストを定期的に変更することは、その大臣職に就いた人物が組織内に独自の権力基盤を形成することを防ぐ働きがある。
その他の特徴としては、外相や、財務相を除く経済関連の大臣(電気相、投資相、石油相、水資源相、労働力相)が留任となった。現在進行中の経済改革やナイル川のルネサンス・ダムの交渉における任務遂行を重視したとも考えられる。
(研究員 金谷 美紗)
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