中東かわら版

№30 イエメン:連合軍がフダイダへの攻撃を開始

 2018年6月13日、サウジが率いる連合軍は「アンアール・アッラー」(俗称:フーシー派)の制圧下にあるフダイダへの攻撃を開始した。同地は紅海に面し、港湾・空港を擁する交通の要衝である。フダイダへの攻撃については、住民に多数の死者が出る恐れがあるため国連などが懸念を表明し、戦闘回避のため外交努力が続けられていたが、連合国・ハーディー前大統領派は外交努力に見切りをつけて攻撃に踏み切った。

 フダイダは、イエメンにおいてはアデンに次ぐ第二の港湾と位置付けられ、海路で運ばれる輸入品の約8割がフダイダ港を経由している。特に、紛争勃発後はサナアをはじめとする「アンサール・アッラー」の制圧地域向けの援助物資の玄関口として機能してきた。また、国連機関によると現在フダイダ市内にはおよそ60万人が居住しており、その約半数は子供である。

 

評価

 連合軍側は、フダイダ港を通じて「アンサール・アッラー」が弾道ミサイルの部品やその他の武器をイランから入手していると見ていた。フダイダ港を連合軍側が制圧することは、「アンサール・アッラー」の補給路を断ち、イエメン紛争の帰趨に大きな影響を与える。また、連合軍はこれまでに複数回、「アンサール・アッラー」がフダイダを拠点にして紅海の国際航路を往来する船舶などを攻撃していると発表しており、国際航路の安全確保もフダイダ港の制圧の名分としている。

 一方、フダイダ港は「アンサール・アッラー」の武器調達経路と考えられているだけでなく、サナアをはじめとする内陸部向けの物資の受け入れ口であり、これを連合軍が制圧することとなれば、単に武器の供給だけでなく人道援助も含む「アンサール・アッラー」の制圧地域全体への経済的な封鎖も可能となる。イエメン紛争の結果、同国の国民(約2600万人)のうち2000万人近くが援助を必要とする状態に追い込まれた上、連合軍の爆撃による民間人の被害や社会資本・生産設備の破壊も相次いである。そうした中、報道機関など現地からの被害状況の発信の動きが鈍く、今後予想される被害に対する危機感も国際機関や援助団体の間のものにとどまっているように見受けられる。連合軍に参加した諸国の戦死者数をはじめとする、人的被害の状況についても、イラク、アフガン、シリアなどで行われているような集計や推計が発表されているわけではない。紛争や被害の実態について、十分な量・質の情報を得ることが事態打開の第一歩となろう。

(髙岡主席研究員)

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