中東かわら版

№28 アフガニスタン:ラマダーン明け停戦の実現可能性

 2018年6月7日、アフガニスタンのガニー大統領は、断食月明けの祝祭の前後で計8日間停戦すると発表した。一方、ターリバーンは6月9日付で司令部から、「国民が祝祭の日々を安全に過ごすため」と称し、「すべてのムジャーヒドゥーンは、祝祭の期間の3日の間、国内の違反者に対する攻撃的作戦を全国で停止するよう求められる。ただし、攻撃を受けた際は全力で防衛すること」、「外国の占領者は上記の裁定から除外される。ムジャーヒドゥーンは、いつでも、どこでも彼らに対する作戦を継続し、彼らを攻撃対象とせよ」などの内容の教導を発表した。

 

評価

 上記は、一見するとアフガン政府とターリバーンとの間でなにがしかのやり取りが営まれているように見えるが、現実の問題としては、ラマダーン明けの祝祭期間中に一般に想像されるような「停戦」が実現する可能性は高くないと思われる。まず、ターリバーンはガニー大統領が表明した停戦には何ら言及していない上、同派が攻撃的作戦を停止する対象として言及した「国内の違反者」が何を指すか不明である。ターリバーンは、従来アフガン政府やその軍や治安部隊を「(占領者の)傀儡」と呼称しており、これらを指して「国内の違反者」なる表現を用いた事例はないといってよい。また、外国の占領者に対する攻撃は祝祭期間中も励行されていることから、アフガン国内でターリバーンによる攻撃や軍事行動がやむことは全く想定できない。

 続いて、アフガン国内では「イスラーム国 ホラサーン州」を名乗る集団が活動しているが、これについてはガニー大統領も停戦対象外と表明している。また、同派が停戦や作戦行動の停止を表明することも予想しにくい上、最近同派はターリバーンに対しても「背教者」との呼称を用いるようになっており、この点からは「イスラーム国」とターリバーンとの抗争はむしろ激化する可能性が高い。

 長期にわたり戦災に見舞われているアフガンにおいて、停戦が実現したり、紛争当事者に和平の機運が生じたりすることは望ましいことではあるが、今般のラマダーン明けの停戦に関する状況を見る限り、希望的観測は抱けないだろう。

(髙岡主席研究員)

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