中東かわら版

№20 チュニジア:地方議会選挙の暫定結果

 5月6日、チュニジアで地方議会選挙が実施され、同8日に暫定結果が発表された。投票率は35.6%、最も多くの議席を獲得したのは無所属リストで、次いでナフダ党、チュニジアの呼びかけ党という連立与党が続いた。なお、最終結果は6月13日に発表される予定。「アラブの春」によって政権が崩壊し民主化移行を開始した国(チュニジア、エジプト、リビア)の中で、チュニジアだけが国政選挙に加え、地方議会選挙も完了したこととなる。

 

 

 (出所)独立最高選挙機構、各紙報道をもとに作成。

 

評価

 「アラブの春」による政権崩壊を経験した国のなかで、チュニジアだけが民主的な選挙を国政レベル(大統領選挙、議会選挙)だけでなく地方レベルでも実施できたことは評価できる。エジプトでは国政選挙は行われたものの地方議会選挙は閣議の議題にさえ上がらず、リビアでは地方議会選挙は行われたが国政が東西に分裂しており、いずれの国も「アラブの春」後の民主化は失敗したからである。

 現連立内閣を率いるナフダとチュニジアの呼びかけ党が合わせて過半数の議席を獲得したが、この二大政党が勝者となることは予想の範囲内であった。国政レベルでの勢力関係が地方レベルでも反映されたといえよう。しかし地方議会選挙に対するチュニジア国民の関心は低く、投票率は35.6%という低さだった。その理由は、2011年以降、失業問題や賃金水準といった社会経済問題は改善されず、国政では政党間の争いや非難の応酬が続き、国民が政治に期待をしなくなったことが挙げられる。チュニジアが民主化に成功した理由の一つは、多くの政治勢力が合意によって政策を決定したことにあるが、この合意型政治が今や与野党や連立与党内の対立を促す働きをしている。シャーヒド首相は、低い投票率について「ここに我々が学ぶべき強いメッセージがある。市民の信頼を取り戻せるように政治の議論を改善しなくてはならない」と述べた。制度面の民主化を終えたチュニジア政治の課題は、政策実施においていかに市民の要望に応えるかという問題に移っている。この問題を無視してしまうと民主主義に対する国民の信頼・支持の程度が低下し、何らかの危機的状況が発生した際に非民主的政治形態を国民が受け入れてしまったり、正規の政治制度を迂回した政策決定(汚職など)を撲滅する政治家側の誘因が低くなることも考えられる。

(金谷研究員)

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