中東かわら版

№21 イラン・アメリカ:ポンペオ米国務長官が12項目の要求リストを発表

 21日、アメリカのポンペオ国務長官がイランに対し12項目の要求リストを発表した。各項目の概要は以下の通り。また今回の発表に際してポンペオ国務長官は、イランへの脅威への対抗として前例のない経済圧力をかけると述べている。

  1. イランは核プログラムの軍事的側面につきIAEAに詳細な説明を行い、また永久かつ検証可能な形で各プログラムを永久に放棄すると宣言しなければならない。
  2. イランはウラン濃縮を止めなくてはならず、またプルトニウムの再処理を決して追求しない。これには重水炉の閉鎖を含む。
  3. またイランはIAEAに対し、イラン国内のすべての土地に対する無制限のアクセスを付与しなければならない。
  4. イランは弾道ミサイルの増備、核積載可能なミサイルの発射と開発を停止しなければならない。
  5. イランは、イラン国内で誤った容疑で拘束されている、あるいは行方不明になった全てのアメリカの民間人、また我々のパートナー、同盟国の民間人を解放しなければならない。
  6. イランは中東のテロリスト組織への支援を止めなければならない。これにはレバノンのヒズブッラー、ハマース、パレスチナのイスラーム・ジハード組織(PIJ)を含む。
  7. イランはイラク政府の主権を尊重し、シーア派民兵の非武装化、非動員、再統合を容認しなければならない。
  8. イランは、アンサール・アッラーの民兵への軍事支援を停止し、イエメンにおける平和的な政治解決に向けて取り組まなければならない。
  9. イランは、イラン人司令官の下にある全ての勢力をシリアから撤退させなければならない。

10. イランは、ターリバーン及びアフガニスタンと域内にいるその他のテロリストへの支援を止め、またアル=カーイダの隠蔽を止めなければならない。

11. イランは、革命防衛隊のゴドス軍によるテロリストと軍事的パートナーへの支援を止めさせなければならない。

12. イランは、アメリカの同盟国を多く含む近隣諸国に対する脅迫的行動を止めなければならない。この行動にはイスラエル殲滅の脅迫、サウジアラビアとUAEにミサイルを持ち込むという脅迫、国際的海運への脅迫、サイバー攻撃による破壊の脅迫を含む。

評価

 

 今般の要求リストは、今後、イランとの新たな核合意を取り結んでいく際の条件として位置づけられているが、その多くは現在の中東地域で発生している諸問題の原因をイランに結び付けたものである。さらに、これらの要求が履行されない限り、イランへの経済制裁は継続されると発表されている。

 このように核合意の問題を中東域内の諸問題と関連付けて、イランへの圧力を経済制裁という形で強めようとするのであれば、トランプ政権は中東地域にカネやヒトなどの資源を投入する必要に迫れられる。特に、イランへの経済制裁は、世界経済に影響を与え続けると予想されており、アメリカもその影響を被ることになるだろう。そうであれば尚更、中東諸国の問題への関与をアメリカは迫られることになる。だが、これまでトランプ政権はサウジを中心とした反イラン陣営を中東地域で形成し、域内の問題から生じる負担を肩代わりさようとする方針を取ってきた。今回の発表とこれまでの外交方針が問われることも考えられる。

 

(研究員 西舘 康平)

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